【8月8日 AFP】「エルメス(Hermes)」のメンズウェア部門でアートディレクターを務めるフランス人デザイナーのヴェロニク・ニシャニアン(Veronique Nichanian)は、ファッション業界で唯一メンズを手掛ける女性として異色の存在だ。しかも26年間続けているということも、また珍しい。

「いつも同じ不安を感じています。でも溢れるほどの熱意もあります」と、彼女は笑いながらAFPの取材に応えた。

 1988年、当時エルメスのCEOだったジャン・ルイ・デュマ(Jean-Louis Dumas)氏からアートディレクターを任されたとき、こう言われたという。「小さな事業だと思ってやりなさい。君には自由裁量権を与えるよ」

■男性社会で働く覚悟

 ヴェロニクは以前、イタリアのブランド「セルッティ(CERRUTI)」で働いていた。デザイン学校を出たばかりの彼女を雇ったニノ・セルッティ(Nino Cerruti)は、「懸命に働き」、男性社会で働く女性としての「覚悟」を教えてくれたという。

「すごくマッチョな社会で、男性たちは女性にあれこれ言われるのを嫌いました」と、彼女は振り返る。

 ヴェロニクはこの世界に「最初は偶然入った」というが、そのうちに魅力に目覚めた。「私は不必要なディテールなどが好きではないので、メンズファッションが持つ厳格さとでも言うべき部分に惹かれました」

■両親に影響されて

 いま50代になったヴェロニクは、10代の頃からファッション界で働くことを夢見ていた。両親がファッション関係の仕事をしていたわけでもないが、彼らが「とてもエレガント」だったことも影響しているという。

 彼女はアルメニア出身の父親のファッションを「控えめでシック」と表現し、母親と祖母がどのように「エルメス」のバッグやスカーフを使っていたかを説明してくれた。

 美しいブルネットの髪に輝く瞳をもった彼女はさまざまな場所や物からインスピレーションを得ていると語る。「ストリートだったり、読んでいる本だったり、見に行ったショーだったり・・・」