■「恥ずかしいと思うものは一つもない」

 エルメスのメンズ既製服の売上高は昨年には2桁の成長をみせたが、「これで終わりではない」と語る。

 「長さを全然変えないものもあるし、ミリ単位の変更を加えるものもある」とヴェロニクが語るように、ショーを重ねるごとに大きな変化はないものの、「コレクションはどんどんリッチになっている」。

 「エルメス」の服は高価なため、男性たちは1シーズンが終わった後も着続けることができる。「20年前のコレクションを見て、恥ずかしいと思うものは一つもありませんでした。だって全て今も着られるデザインですもの」

■最高のクリエーションの場

 「エルメス」は、フランスやイタリア、日本などから「最も美しい素材を取り寄せる資金力がある」と語ったヴェロニクは、実際にコートのポケットにどのようにラムスキンの裏地をつけるか説明した。「その心地よさはコートを着ている男性にしかわからないでしょう。デザイナーと顧客だけの『秘密』なんです」

 店舗を訪れると、もちろんリッチな客もいるが、「お金をためてきた若い男性」もいると言う。スタイリッシュで長く使える服を買いにきているのだ。

 男性のワードローブで欠かせないアイテムを2つ選ぶなら、という質問にヴェロニクは「美しいネイビーのフランネルのジャケットとレザーのものなら何でも」と答えた。

 自分のブランドを立ち上げることは考えていないという。「私にとってエルメス以上に自分のクリエイティビティを発揮できる場はないでしょう。不満などはありません。ここがヴェロニク・ニシャニアンがいるべき場所です」(c)Caroline TAIX