【8月7日 AFP】エボラ出血熱の流行ですでに1000人近くのアフリカ人が死亡している中、エボラ出血熱を発症した米国人患者2人に実験薬を投与した決定をめぐり、倫理をめぐる議論が起きている──だが米国の専門家らはこの決定を倫理的に正当化しうると述べる。

 米キリスト教系支援団体「サマリタンズ・パース(Samaritan's Purse、サマリア人の財布)」の米国人医療従事者2人に実験薬「ZMapp」が投与されたことを受け、世界保健機関(World Health OrganizationWHO)は6日、西アフリカにおけるエボラウイルスの感染拡大に対して実験薬を投与するべきかどうかを話し合う特別会合を来週開くと発表した。

■エボラ研究第一人者「アフリカにも実験薬利用の機会を」

 同実験薬は現在、開発のごく初期段階にあり、これまではサルでしか臨床試験が行われていない。また大量生産も行われておらず、エボラを治療する能力があるかどうかも証明されていない。だが実験薬を米国人患者に投与したとのニュースに対し、ギニアやリベリア、シエラレオネなどの感染者の多い地域に同実験薬を提供するべきとの声が上がっている。

 7人の感染が確認されているナイジェリアは、「ZMapp」入手の可能性をめぐり米疾病対策センター(Centers for Disease Control and PreventionCDC)と協議を始めたと発表している。

 また、1976年にエボラウイルスを発見した一人であるロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院(London School of Hygiene and Tropical MedicineLSHTM)学長のピーター・ピオット(Peter Piot)氏を含む、エボラ研究の第一人者3人は6日、同実験薬を幅広く提供するべきだと声明を発表した。

 米紙ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)によると3人は声明で「もしエボラがいま欧米諸国で広がっているとしたら、各国の公衆衛生当局はリスクにさらされている患者たちに実験薬や実験ワクチンを提供するだろう。エボラの流行が起きているアフリカ諸国にも同じ機会が与えられるべきだ」と主張した。