【8月12日 AFP】バーボンウイスキーの瓶を手に、リングネーム「エイミー・スマックハウス(Amy Smackhouse)」は片腕だけで相手を倒してのけた。米首都ワシントンD.C.(Washington, DC)で開催された女性アームレスリング大会決勝でのことだ。

 ウイスキーだけではない。「スマックハウス」はきつい化粧にくわえたばこで、猥雑な冗談を口にする――アルコールと薬物依存の末に2011年に亡くなった英歌手エイミー・ワインハウス(Amy Winehouse)を風刺した演出だ。その正体は、環境NPO法人で働く女性、アンドレア・カバナ(Andrea Kavanagh)さん。「私と彼女は見た目がまるで違うから、面白いでしょう」と、大爆笑しながら言った。

 このふざけた大会は、ユーモアを楽しみながら募金活動をするチャリティーイベントだ。それでも、そこには参加者たちの競争心も見え隠れする。

 カバナさん自身も創設に関わった同好会「コロンビア特別区(ワシントン)婦人アームレスラーズ(DC Lady Arm Wrestlers)」は2010年、ちょっとした遊びを兼ねた慈善活動としてスタートした。6月28日に開催されたトーナメントには8人が参加し、「黄金の上腕二頭筋(Golden Biceps)」のタイトルをかけて競った。

 観客は誰が勝つかに賭け、収益金は全額、市内のフリースクールに寄付される。

「この4年でトーナメントを13回開催し、5万ドル(約500万円)近くを集めました」と、リングネーム「セーラー・スラムロック(Sailor Slamrock)」ことアシュリー・エバンズ(Ashley Evans)さんは説明した。「女性の社会的地位向上を目指すイベントでもあります。私たちだって男性に負けないぐらい強いんだと示しているんです」

 審判を務めるのは、元ベテラン陸軍兵を自称するフィル・ヤンガー(Phil Yunger)さんだ。賄賂(わいろ)を受け取ったら全て寄付すると誓う白髪の高齢男性で、「このご婦人たち? もう厄介でしようがないよ。彼女たちはアームレスラーだ。この中の誰かと勝負する根性があるかい?」と茶目っ気たっぷりに語った。

 マーガレット・サッチャー(Margaret Thatcher)元英首相ならぬ「マーガレット・スラッシャー(Margaret Thrasher)」選手が、さっそうとリングに上がった。英国旗のタトゥーペイントを見せびらかし、英国への表敬を演出する。保守的な衣装に、髪形はきつく巻いたお団子。サッチャー氏をまねたインテリ層っぽい英国なまりで、「私のテクニックはとてもシンプル」と冗談を飛ばす。

「対戦相手はいつも、私のブラウスを見下ろすことから始めるの。でも、すぐに私がこんなに年がいっていて醜い女性だと気付く。そのときこそ、私が全力で勝負をかけるとき」

 そのテクニックは、これまでのところ成功しているようだ。「スラッシャー」選手は、故ジョン・F・ケネディ(John F. Kennedy)元米大統領の夫人だったジャクリーン・ケネディ・オナシス(Jacqueline Kennedy Onassis)さんをモデルにした「ジャッキー・オナスティ(Jackie O'Nasty)」選手にあっさり勝利した。

 ただ、「マリリン・モンローと対戦するのが楽しみね」とのコメントを残した「オナスティ」選手は、もしかすると次の対戦のために力を温存していただけかもしれない。(c)AFP/Guillaume DECAMME