【7月28日 AFP】地元の人々の間で「世界の果て」として知られるロシア東部シベリア(Siberia)の辺境地域で、地面にぽっかりと開いた巨大な穴が発見され、同国では科学者らによる調査団が派遣されるなど、大きな話題を呼んでいる。

 地下資源が豊富なヤマロ・ネネツ(Yamalo-Nenets)自治管区にあるこの巨大な穴の存在は、動画共有サイト「ユーチューブ(YouTube)」に投稿された動画で最初に明らかになった。この動画(https://www.youtube.com/watch?v=2kMs05VaOfE)はこれまでに700万回以上も視聴されている。

 この動画を投稿したユーザー「ブルカ(Bulka)」さんは「穴は桁外れの大きさで、ミル8(MI-8)ヘリコプター数機で中に降下しても何かに衝突する心配はないほどだ」と記している。

 この穴は、モスクワ(Moscow)の約2000キロ北東、同地方の中心都市サレハルド(Salekhard)の北方にある広大な天然ガス田から約30キロ離れた永久凍土に位置している。

 この謎の穴の出現により、別世界的な何かが原因で発生したものかもしれないとする臆測や陰謀説が飛び交っており、異星人の仕業かもしれないとの声までも上がっている。

 当初は隕石(いんせき)が原因でできたクレーターとの説が出ていたが、科学者らはこれを否定している。

 露インタファクス(Interfax)通信によると、ロシア科学アカデミー(Russian Academy of Sciences)石油ガス研究所(Oil and Gas Research Institute)のバシリ・ボゴヤフレンスキー(Vasily Bogoyavlensky)副所長は「この説は、あらゆる反論に耐えられない」と話している。

 同副所長は、穴は永久凍土層の地下氷の融解に起因する可能性が高いと考えている。地下氷の中に閉じ込められていたガスが解放され、地中に蓄積されて高圧になり、ある時点で炎を伴わない爆発が起きて地面を突き破ったのだという。

 インタファクス通信によると、ヤマロ・ネネツ自治管区のドミトリー・コブイルキン(Dmitry Kobylkin)知事は、謎の解明を目指し、現地語で「世界の果て」を意味するヤマル半島(Yamal Peninsula)のツンドラ地帯にあるこの穴に科学調査団を派遣した。

 永久凍土を研究している露地球氷圏研究所(Earth Cryosphere Institute)の主席研究員、マリーナ・ライブマン(Marina Leibman)氏も、同地区を調査するために派遣されたチームの一員だ。

 ライブマン氏は地元当局が発表した声明の中で、穴付近には「人や機械類の痕跡は存在しないことが綿密な調査で分かった」と語っている。

 また縁周辺に燃焼の跡がみられないことから、穴が隕石によってできた可能性はないだろうと同氏は指摘している。

 ライブマン氏は「穴は、何らかの空洞に沼地ガス(メタン)が蓄積して圧力が上昇した際に形成された可能性が最も高い」と説明する一方で、「今までのところ、これは最も矛盾が少ない仮説にすぎず、証拠は何もない」と注意を促した。