【7月6日 AFP】ウクライナ軍は5日、同国東部の親ロシア派武装勢力が拠点としていたスリャビャンスク(Slavyansk)を奪還し、国旗を掲げた。大規模な砲撃によって市内の大半が壊滅的な被害を受けたものの、ウクライナ政府にとっては武装勢力との戦いにおける最大の勝利となった。

 スリャビャンスクの市長を名乗る人物はAFPに対し、武装勢力はラストベルト地域(旧式の産業工場を抱える斜陽化した重工業地域)にある人口およそ12万人のスリャビャンスクを放棄し、すでに逃走したことを認めた。また、電話取材に応じた地元住民は、バリケードの周辺ではこれまで迷彩服を着て武装した男たちが警備にあたっていたが、同日早朝から誰もいない状態が続いていると語った。

 動画共有サイト「ユーチューブ(YouTube)」に投稿された映像には、青空の下、青と黄色のウクライナ国旗がはためく中、ヘルメットをかぶった兵士らがバリケードで囲まれたスリャビャンスク市庁舎の建物から数十筒の擲(てき)弾発射筒(グレネードランチャー)を運び出す様子が写っていた。

 4月初めに武装勢力に制圧された国内最大規模の武器貯蔵施設があるスリャビャンスクを奪還したことは、ウクライナ政権にとって武装勢力との戦いの大きな転機になる。本格的な内戦にはなっていないものの3か月近くに及ぶ戦闘は、国の存亡そのものを脅かしてきた。

 ウクライナ暫定政権のアルセン・アワコフ(Arsen Avakov)内相 は、武装勢力の撤退はイーゴリ・ストレルコフ(Igor Strelkov)司令官の指揮によるものだったとの見解を示している。暫定政府は、ストレルコフ司令官はロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の大佐だとみている。

 欧米諸国は、ロシア政府が武装勢力に対して秘密裏に、資金や武器を提供していると主張している。ウクライナで新たに誕生した欧米寄りの指導部を不安定化させ、ロシア系住民の多い東部地域を今後も掌握し続けることが目的だという。だがストレルコフ司令官とロシア政府はいずれも、GRUの関与を否定している。

 ウクライナのペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko)大統領はスリャビャンスクの奪還を受けてただちにコメントを発表。攻撃を続けて「都市部に潜入しているテロリストら」を一掃すると明言した。(c)AFP/Stephane ORJOLLET with Dmitry ZAKS in Kiev and Nicolas MILETITCH in Moscow