【7月4日 AFP】インターネット上での「忘れられる権利」を認める判決を受け、米検索大手グーグル(Google)が欧州の利用者を対象に5月30日に受け付けを始めた個人情報の削除要請が、7万件を超えたことが3日、分かった。影響を受けたサイトの中には、世界の大手メディアも複数含まれている。

 欧州司法裁判所(European Court of JusticeECJ)が「忘れられる権利」を認めた裁定に従い、グーグルはこれまでに英国放送協会(BBC)のブログ記事1件と英紙の記事数件に関し、閲覧を制限した。グーグルによると、これまで同社には7万件の削除要請が届いているという。

 ECJは、情報が古かったり不正確だったりするなど特定の条件下で、個人が自分に関する情報へのリンクの削除を求める権利を認めていた。

 しかし、BBC経済部編集者のロバート・ペストン(Robert Peston)氏は、07年に米証券大手メリルリンチ(Merrill Lynch)の会長だったスタン・オニール(Stan O'Neal)氏について書いた投稿が、欧州での一部の検索結果から削除されたことを知り、グーグルによって「わたしのジャーナリズムの一例が殺された」と非難している。

 また英紙ガーディアン(Guardian)も、同紙の記事へのリンク6件が検索結果から削除されたと通知を受けた。うち3件は2010年に起きたサッカー、スコティッシュ・プレミアリーグ(Scottish Premier LeagueSPL)の審判、ドーギー・マクドナルド(Dougie McDonald)氏(現在は引退)をめぐる論争に関する記事だという。グーグルからはリンクを削除した理由に関する説明はなく、不服を申し立てる機会も与えられていないとガーディアン紙は述べている。

 世界最大のニュースサイト「メール・オンライン(Mail Online)」も、マクドナルド氏に関する記事へのリンクを一部検索結果から削除したとの通知を受けたという。同サイトの発行人マーチン・クラーク(Martin Clarke)氏は「こうした例は『忘れられる権利』がいかにばかげたものであるかを示している。図書館に行って、気に入らない本を燃やすのと同じ行為だ」と批判している。(c)AFP/Alice RITCHIE