【7月3日 AFP】元スーパーモデルの妻を持ち、一時は「セレブ大統領」ともてはやされたニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)前仏大統領(59)──しかし同氏の政権復帰の夢が、今度は不正疑惑の網によって阻まれる可能性が出てきた。

 過去6か月間、仏歴代大統領初となるはずの「返り咲き」を綿密に計画してきたサルコジ氏だが、歴史にこのような形で足跡を残すとは考えてもいなかっただろう。

 1日には、仏大統領経験者として初めて刑事事件捜査で身柄を拘束。サルコジ氏はパリの警察署で15時間にわたる事情聴取を受け、汚職と権力乱用の容疑で訴追されるに至った。起訴されて有罪となれば、10年以下の実刑が科される可能性がある。

 当局は、07年の仏大統領選挙時のサルコジ氏に関する不正疑惑の捜査に、サルコジ氏自らが違法に介入した可能性を疑っている。この選挙でサルコジ氏には、リビアの当時の独裁者、故ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐から違法な資金援助を受けた疑いがもたれている。

■度重なる疑惑浮上が支持基盤をむしばむ

 中道右派野党・国民運動連合(UMP)の党首に復活し、政界の最前線へと舞い戻るための足固めを行ってきたサルコジ氏。盟友たちは、与党・社会党が圧力をかける格好の材料となっている司法当局の追及について「当局が追いかけまわすほど、サルコジ氏の闘志は湧く。彼は以前よりも強くなって帰って来る」と述べている。

 こうした状況は前にもあったことだ。サルコジ氏は2013年にも、同じ2007年大統領選でフランス一の富豪女性から不正に現金を受け取った疑惑で刑事訴追されたが、10月に不起訴となり、このとき大統領復帰への障害は取り除かれたかに見えた。

 2年前、二度と戻らないと誓って大統領府を後にしたサルコジ氏だが、世論調査では今もフランスで最も人気の高い政治家の1人だ。2017年の次期仏大統領選ではUMPにとって勝利を期待できる最有力候補だったが、2013年の不起訴決定から9か月経った現在、見通しはそう明るくなくなっている。

 不正事件との関連が絶えず持ち上がってくることの影響は、サルコジ氏の支持基盤を徐々に浸食している。調査会社ハリスインタラクティブ(Harris Interactive)のジャンダニエル・レビー(Jean-Daniel Levy)氏は「サルコジ氏が(UMPの)最有力候補だとする声は、66%から50%に下がっている。依然、トップであることは事実だが、右派をまとめ、左派を攻撃できる人物として(元首相の)アラン・ジュペ(Alain Juppe)氏がサルコジ氏に迫っている」と指摘している。