【6月24日 AFP】ジョン・ケリー(John Kerry)米国務長官は23日、イラクを訪問し、ヌーリ・マリキ(Nuri al-Maliki)首相をはじめとする指導部と会談した。その中でケリー氏は、首都バグダッド(Baghdad)に向け北方と西方から進撃を続けるイスラム武装勢力「イラク・レバントのイスラム国(Islamic State of Iraq and the LevantISIL)」という「実存する脅威」に直面しているイラクに対し、「強力な」支援の提供を約束した。

 訪問中だったヨルダンから空路イラク入りしたケリー氏はイラク指導部に対し、武装勢力を打倒するため、新政権樹立に向けた動きを加速するよう呼び掛けた。

 バグダッドで記者会見したケリー氏は、米国の「支援は強力かつ持続的なものになる」とした上で、「もしイラク指導部が国民の団結に必要な措置を講じれば、支援が効果を発揮するはずだ」という見方を示した。

 一方で、同国が直面する危機は差し迫ったものであると指摘。「イラク指導部は決断の時を迎えている。イラクは実存する脅威に直面しており、イラク指導部はその脅威に立ち向かわなければならない」と述べた。

 会談ではマリキ首相も危機の深刻さを強調。首相府はケリー氏に対し、この危機は「イラクにとってだけでなく、地域および国際社会全体の平和にとっての脅威だ」と語った。

 イラクでは今年4月に議会選挙が行われたが、新政権樹立に向けた大きな進展はない。米国は、アラブ諸国がイラク指導部に対し、速やかに新政権を樹立するよう圧力をかけることを期待している。また米国は、ISILはイラクにとって脅威であるのと同様にアラブ諸国にとっても脅威であるということを認識させようと働き掛けてきた。

 ケリー氏はあらゆる国々、特にペルシャ湾(the Gulf)沿岸諸国に対し、「ISILのような組織にある程度までなら資金提供しても安全だということは一切ない」と警告した。

 ISILは今回の進撃で莫大(ばくだい)な現金や資材を手中に収め、以前から世界中の武装勢力の羨望(せんぼう)を集めていた財源をさらに肥やしている。

 米指導部はマリキ首相に退陣を要求するところまでは踏み込んでいないが、2011年の米軍撤退後にイラクを再建する機会を同首相が逃したと感じていることはほぼ間違いないとみられる。ケリー氏は22日、訪問先のエジプト・カイロ(Cairo)で記者団を前に、米国はイラクの全国民を代表する政権がイラクに誕生することを望むという趣旨の発言をしている。(c)AFP/Jo Biddle