【6月18日 AFP】南極を訪れる観光客が急増していることから、同地のぜい弱な環境が脅かされているとした論文が18日、米専門誌プロス・バイオロジー(PLoS Biology)に発表された。論文では、より積極的な保全活動が呼び掛けられた。

 業界の統計によると南極を訪れる観光客の数は、1990年の年間5000人未満から現在は同4万人ほどに増加。大半の観光客は、南極大陸の1%に満たない氷のない地域を訪れるという。また同地域では、研究施設の数も増え、同時に道路や燃料貯蔵施設、滑走路の建設も進められた。

 オーストラリアの環境調査プログラム「National Environmental Research ProgrammeNERP)」とオーストラリア南極局(Australian Antarctic DivisionAAD)が主導した同研究によると、この氷のない地域には南極大陸の野生動植物の大半が生息しているにもかかわらず、地球上で最も保護されていない地域の一つだという。

 NERPのジャスティン・ショー(Justine Shaw)氏は論文の中で「南極の生物多様性に対する脅威が存在する」と述べ、「氷のない地域のうち保護されているのはわずか1.5%に過ぎない」と指摘している。

 研究に参加した豪モナシュ大学(Monash University)生物科学科のスティーブン・チョウン(Steven Chown)氏は、氷のない地域の生態系は非常にシンプルなため、しばしば人間の活動に伴って持ち込まれる外来種に対して極めてぜい弱だと語り、「他大陸からの草や昆虫といった動植物に侵入されている」と付け加えた。

 論文は、現状での南極の保護レベルは「いかなる意味でも不十分」だと結論づけ、急成長する観光業からの脅威に対しては、さらなる防衛策が必要だと呼び掛けた。(c)AFP