【6月17日 AFP】内部告発サイト「ウィキリークス(WikiLeaks)」に大量の米軍機密情報を漏えいした罪で服役中の米兵、チェルシー・マニング(Chelsea Manning)受刑者が、イラクの問題で米国民は再び米政府に欺かれていると警告した。

 改名前は「ブラッドリー・マニング(Bradley Manning)」の名で知られていた同受刑者は、70万件におよぶ外交公電や軍関連の機密文書などをウィキリークスに流し、スパイ罪など複数の罪で禁錮35年の判決を受けた。事件は米史上、最大の漏えい事件となった。

 マニング受刑者は、自身にとってはまれの公式コメントとなった14日の米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)の論説のなかで、「私の行為が法に反していたことは理解している。だが、私をそうした行為に追いやった懸念は、いまだ解決されていない」と述べ、「イラクで内戦が再燃し、米国が再び介入を検討する中、この未解決の事柄によって、長期におよぶイラクとアフガニスタンへの関与について米軍がどのようなメディア管制を行ってきたかという疑問に、新たな緊急性が生まれるはずだ」と指摘した。

 バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は先週、首都バグダッド(Baghdad)境界から80キロの距離まで迫ったイスラム武装勢力の攻勢を押しとどめるため「あらゆる選択肢を検討している」と表明したが、米部隊のイラク復帰は否定している。

 マニング受刑者は、米軍が2010年のイラク議会選挙について、イラクの安定と民主化に向けた一歩との楽観的な見方を示していた一方で、「現地に駐留していたわれわれは、現実はもっと複雑だと痛感していた」とした上で、「私が目にした軍および外交関連の報告書には、政治的に対立する人たちへのイラク内務省や警察による弾圧の詳細が記されていた。弾圧はヌーリ・マリキ(Nuri Al-Maliki)首相の名のもとに行われ、拘束者は拷問されたり、殺害されたりすることさえあった」と明かした。

 また、陸軍で情報分析官を務めていたマニング受刑者は、イラクでの議会選挙について「米軍が選挙での汚職に関与していたことに衝撃を受けた。しかし、これら深刻な問題の詳細は、米国メディアによって捕捉されることはなかった」と述べている。

 さらに記者らを同行させる米軍の取材慣習についても、「報道の自由に対する現行規制や、政府の行き過ぎた秘密主義が、米国人に自らの税金が費やされている戦争で起こっている現実の全貌を把握することを妨げている」と批判した。(c)AFP/Aymeric VINCENOT