【6月16日 AFP】未来の仕事場は、パーテーションで区切られた狭い空間とは限らない。カフェだったり自宅のリビングだったり、空港のターミナルだったり……。テクノロジーが接続環境を整えてくれれば、どこでもありだ。

 すでにノートパソコンのおかげで多くの人が、会社以外の場所で仕事をできるようになっている。だがこの傾向は、仮想現実の「アバター」(自分の分身となるキャラクター)やテレプレゼンス技術を活用したロボットの進化によって、より拡大していくだろう。

「人々は自宅だけでなく、どこでも都合のいい場所から働くようになっている」とテクノロジー調査会社フォレスター・リサーチ(Forrester Research)のアナリスト、テッド・シェドラー氏はいう。「早めに退社して家に帰り、子供を寝かしつけてから家で仕事をする人もいる」

 ソフトウェア企業シトリックス(Citrix)が行った2012年の調査によれば、米国の雇用主の90%が「モバイルな働き方」を許可していた。こうした慣行は他の国でも広がっており、中国では85%、ブラジル81%、インド77%、英国72%、フランスとドイツは71%となっている。

 次なるステップのカギは、直接顔を合わせたコミュニケーションの欠如を埋めるためのロボットやアバターといった技術の導入だ。例えば、いわゆるテレプレゼンス・ロボットは、ビデオ会議を可能にしてくれる。

 カリフォルニア(California)州のベンチャー企業ダブル・ロボティクス(Double Robotics)の製品は、自動でバランスをとるスクーターにiPadを取り付けてある。これがオフィス内を歩き回り、同僚たちと交流してくれる。「顧客は皆、人と話していたのか、ロボットと話していたのか覚えていないと言ってくれる」と、同社のジェイ・リュウ氏はいう。「最初の興奮が冷めると、もうそれはただのロボットではなく、シアトルのオフィスのジョンだったり、コニーなんだ」。さらにオフィス内を移動したり、休憩室で世間話をしたり、同僚のデスクに行って質問したりするので、在宅勤務している人も「チーム」の一員だという感覚が得られる。

 米スタンフォード大学(Stanford University)バーチャル・ヒューマン・インタラクション研究所(Virtual Human Interaction Lab)のジェレミー・ベイレンソン(Jeremy Bailenson)所長は、バーチャル会議は直接会って行う会議よりメリットがある場合が多いと語る。「握手やアイコンタクトに勝るものはないといわれるが、私が作ったのは握手やアイコンアクトができるシステムだ」と同氏は語る。アバターの特徴を変えたり、身振り手振りを調整もできる。「これによって私はバーチャル会議でさまざまなことができ、営業マンとしてより効果的に動け、より優秀なリーダーとなれる」

 仮想現実技術によって自動車通勤にかかる燃料費を節約し、事故の危険を避け、時間も節約できるとベイレンソン氏はいう。しかし、もっと大々的に採用されるためには、面倒なヘルメットやセンサーをなくして、より自然に使えるようにしないといけない。同氏は、フェイスブック(Facebook)がバーチャルリアリティー企業のオキュラス・リフト(Oculus Rift)を20億ドル(約2000万円)で買収したことから、バーチャルな働き方のトレンドが加速するかもしれないと語った。

 米自動車大手フォード・モーター(Ford Motor)は自社研究所で仮想現実技術の活用を始めており、サイドミラーやフロントガラスに組み込んだ設計もエンジニアたちに試させている。同社の仮想現実技術専門家、エリザベス・バロン(Elizabeth Baron)氏は「世界中にいるフォードの設計者やエンジニアたちがバーチャルに並んで一緒に製品を作れる」という。

 ただし、こうした働き方をする人が直面する問題の一つに、常に職場とつながっているためにストレスが増えることがあるかもしれない。米世論調査会社ギャラップ(Gallup)の最近の調べでは、フルタイムで働く人の3分の1が、週末でもメールをチェックするよう会社から求められていると回答した。(c)AFP/Rob Lever