【6月16日 AFP】欧州連合(EU)の仲介で行われていたロシアとウクライナのガス供給交渉は16日、合意に達することができず決裂した。ロシア側は、グリニッジ標準時(GMT)の同日午前6時(日本時間午後3時)までにウクライナから19億5000万ドル(約2000億円)の支払いがなければ天然ガス供給を停止する構えを見せている。

 ロシアからのガス供給が停止されれば、欧州への天然ガス供給も遮断され、冷戦以来となる東西危機の再燃が懸念される。ロシアとウクライナのガス協議は、2か月におよぶ分離独立派による攻撃への対応で国家の存続そのものが脅かされる中、エネルギー危機を回避したいウクライナの主催で開催されていた。

 だが露国営ガスプロム(Gazprom)広報のセルゲイ・クプリヤノフ(Sergei Kuprianov)氏はAFPの電話取材に対し、協議は夜を徹して行われたが、ガス価格やロシアに対し未払いとなっているウクライナのガス料金の正確な金額をめぐり両者の溝は埋まらず、交渉は決裂したと語った。クプリヤノフ氏は「午前10時(日本時間午後3時)までにウクライナからの支払いがなければ、今後のガス供給はない」と述べ、すでに航空機で帰国の途にあると明かした。

 2006年以降3度目となるロシア・ウクライナ間の「ガス戦争」は、昨年末から今年初頭にかけての反政権運動によって旧ソ連構成国のウクライナがロシア政府の影響下から脱する方向に転換したことを受け、ロシアがガス価格を倍近くに引き上げたことによって勃発した。

 ウクライナが受けるガス供給の半分はロシアからのもので、欧州で消費されるガスの15%がウクライナを経由している。このためEUは危機感を覚え、欧州委員会(European Commission)のギュンター・エッティンガー(Guenther Oettinger)委員(エネルギー担当)の仲介で早急にロシア・ウクライナ間協議がもたれた。

 ウクライナ側は交渉開始の際、ロシアが要求する19億5000万ドルを支払う用意はあるとしたが、条件としてガス供給価格を現行の1000立方メートル当たり485.50ドル(約4万9500円)から326ドル(約3万3200円)に引き下げるよう求めた。

 これに対しロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は、385ドル(約3万9000円)を最終提示額だとして譲らず、16日午前までに未払い金の支払いがなければガス供給を停止すると警告していた。(c)AFP/Dmitry ZAKS