【6月1日 AFP】感電を避け、溺れないように、ワニにも気を付けて──。タイの携帯ゲームアプリ「サイファ:洪水ファイター(Sai Fah: The Flood Fighter)」のヒーローは、自然の脅威の怖さをアジアの子供たちに教えることを目的としている。

 2011年にタイを襲った大洪水では、数十人の子供を含む800人以上が犠牲になった。

 惨劇の再発を防ぐため、国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)は無料の携帯ゲームアプリを使うことを考えた。「タイではみんなが携帯電話を持っている。だから私たちのメッセージを、アプリを通じて伝えようと思った」と、同ゲームの開発を監督した宮沢一朗(Ichiro Miyazawa)氏は語る。

 国連(UN)の専門機関、国際電気通信連合(International Telecommunication UnionITU)によれば、タイの携帯電話契約数は2012年、住民100人当たり130近くに達した。そんなタイで、スマートフォンやタブレットコンピューターに無料でダウンロードできるこのゲームは大ヒットとなった。

 タイでは今年1月のリリース後、数週間で2万2000以上のダウンロードを記録し、教育アプリチャートのトップに立った。

 コンセプトはシンプルだ。主人公のサイファ(稲妻の意)君は、家が洪水に襲われ、水位が上がってくる間に22のエピソードでミッションに立ち向かう。それぞれのエピソードには防災対策のメッセージが含まれている。

 例えば、食料などの必需品を保管しておくこと、重要な物を高いところに置くこと、煮沸していない水を飲まないこと、分電盤のブレーカーを全て切ることなどだ。洪水によって流されてきたヘビやワニを回避するというミッションもある。

 ゲームの舞台となっているアユタヤ(Ayutthaya)地方は、2011年の洪水で民家や寺院、自動車工場などが何週間も浸水するなど、特に大きな被害を受けた地域だった。

 タイでの成功を受けて、バングラデシュ、インドネシア、ミャンマー、フィリピンなど同じく洪水に見舞われやすい他のアジア諸国向けに英語版もリリースされ、リリース後数週間のダウンロード数は少なくとも4000に上った。

 こうした国々は夏季の季節風モンスーンがもたらす大雨による洪水が頻繁に起きている。急速な都市化。森林伐採、インフラの未整備が洪水の被害を悪化させている。(c)AFP/Amélie BOTTOLLIER-DEPOIS