■時代の変化

 時代が変わってきたのは、米経済誌フォーブス(Forbes)にも見て取れる。同誌の長者番付には、新たにヒップホップアーティストのカテゴリーが加わった。最新のリストのトップは、レコードレーベルにファッションブランド、音楽専門チャンネルなどを持つP・ディディだった。

 そして、自身のファッションブランドを立ち上げたり、プロバスケットボールチームの共同オーナーになったりして、自らの帝国を築き挙げてきたのはジェイ・Z(JayZ)だ。ジェイ・Zは、ヒップホップアーティストが起業家精神をもつのは、選択というより必要だからだと語る。

 ジェイ・Zは昨年、「自分たちはあらゆるレーベルに断られた。でも賢かったのは、あきらめなかったことだ。自分たちの手でCDを売り、自分たちで流行を生み出したんだ。そうしたら、レーベル側からアプローチがあった」とコメントしている。

 近年、レコード業界は収益の落ち込みに直面しており、ヒップホップの波を無視できなくなっていったのも事実だ。

「ヒップホップ界に起きた最高の変化は、10代の子供たちがラッパーのポスターを部屋の壁に貼り、ラッパーの服装をまね、そしてラップの曲を歌い始めたことだ」と、エミネム(Eminem)のアルバムをプロデュースしたこともあるスタウト氏はそう述べる。

 今やヒップホップはビッグビジネスと化した。同時に、その文化の根底にある社会や権力に対する怒りについての表現は影を潜めた。

「ヒップホップは、とうの昔に商業主義と折り合いをつけている。米国に政治的なヒップホップはもう存在しない」とチャルナス氏は説明した。(c)AFP/Jeremy TORDJMAN