■完全な肥満が良性の状態

 論文の主執筆者の1人で、カリフォルニア大学バークレー校の研究者のエライン・ロレンゼン(Eline Lorenzen)氏は「シロクマは、脂肪中心の生活を送っている」と語る。

 ロレンゼン氏は「シロクマの場合、完全な肥満が良性の状態になっている」とし、「われわれは、シロクマがそうした状態にどのようにしてうまく対処できているのかを解明したいと思った」と述べた。

 研究チームは、グリーンランド(Greenland)のシロクマ79頭から血液と組織のサンプルを採取。そしてスウェーデン、フィンランド、米アラスカ(Alaska)州のグレーシャー国立公園(Glacier National Park)、アラスカ海岸沖のアドミラルティ・バラノフ・チチャゴフ(ABC)諸島(Admiralty, Baranof, and Chichagof Islands)のヒグマ10頭から採取した同サンプルと比較した。

 その結果、最も選択性の強い遺伝子の1つは「APOB」であることを研究チームは発見した。APOBは哺乳類で、LDLとして知られる「悪玉」コレステロールに含まれる主要タンパク質をコード化し、血液から細胞内に移動できるようにする遺伝子だ。

 この遺伝子に生じた変化は、人間では危険性が高いと思われるレベルの高血糖、高トリグリセリド(TG)状態にシロクマがどのように対応しているかを示唆している。

 研究チームは、肥満が増加している現代社会において、このシロクマの消化機能が、いつか人間の健康維持に役立つのではと期待を寄せている。

 ニールセン教授は「比較ゲノミクス研究では、人間が直面する同様の状態に、他の生物がいかに対処しているかを学ぶことができる」と説明した。(c)AFP