【5月3日 AFP】先月、韓国南西部・珍島(Jindo)沖で沈没した旅客船セウォル(Sewol)号に乗っていた高校生らが、転覆・沈没の直前に携帯電話で撮影した動画が現地メディアで公開された。傾き始めた船内で生徒らは笑いながら、沈没した豪華客船「タイタニック(Titanic)号」のようだと冗談を言い合っていた。

 この動画は、パク・スヒョン(Park Su-Hyeon)さん(17)の携帯電話で撮影されていた。パクさんはその後、この携帯電話と一緒に遺体となって見つかっており、その事実と事故発生当初の楽観的なやり取りとの対比が、いっそう皮肉で悲痛なものとして受け止められている。

「おーい、僕を助けて」と1人の男子生徒がふざけると、後でその動画を「フェイスブック(Facebook)に投稿しようよ」と別の生徒が提案。船が傾きを増すにつれ、ある生徒は「タイタニックみたいになってきたね」と話していた。

 携帯電話の時計によると、撮影日時は4月16日午前8時52分と記録されていた。同船の乗組員が最初の緊急信号を出す数分前だ。

 その11分後。まだ陽気な様子の生徒らは、「遺言を残しておいた方がいいかも」と冗談を言ったり、この騒ぎがニュースになるだろうかと話し合ったりしていた。

 この動画は、パクさんの父親が地元メディアに提供。生徒らの身元を明かさないよう配慮し、画像処理された上で公開された。船内では撮影中ずっと、乗客に対しその場から動かないようにという指示が音声アナウンスで何度も伝えられていた。

 ある生徒は、「船長は何をしているんだろう?」と首をかしげていた。

 パクさんは午前9時6分ごろ、再び撮影を開始。その時点になると、船内の雰囲気が恐怖と混乱へと変化しつつある様子がうかがえる。ある生徒は脚が震えて吐き気がすると訴え、別の生徒は救命胴衣の着用を呼び掛ける放送を聞いてこうつぶやいた。「どうなってるの。救命胴衣を着ろって?沈んじゃうの?」(c)AFP