【4月22日 AFP】世界最高峰エベレスト(Everest、8848メートル)で前週18日に起きた雪崩により、ネパール人登山ガイド13人が死亡し、3人が行方不明となった事故を受け、ガイドたちは今シーズンの登山の中止を決定した。

 シェルパと呼ばれるネパール人登山ガイドたちは、亡くなった仲間に敬意を表するためにエベレスト登山の一時中止を求め、政府が登山保険の上限を見直し福祉基金を設立するまで今月以降、無期限ですべての登山をキャンセルする可能性があると迫っていた。

 この事態をめぐり、夏の登山シーズンを間近に控えるベースキャンプでは、登山家たちとシェルパたちの関係が悪化していた。

 米国最高齢のエベレスト登頂を目指していた元弁護士、エド・マジェツ(Ed Marzec)さん(67)は、自分のチームからガイド1人が抜けたために登山を断念することにした。キャンプでは若い登山家たちが、シェルパたちにキャンセルしないよう頼み込むために、テントからテントへと駆けずり回っていたという。

 登山ガイド専門会社ピーク・フリークス(Peak Freaks)で遠征を率いるべテラン登山家、ティム・リッペル(Tim Rippel)さんもブログで「シェルパたちは感情的になっていて、状況は非常に複雑になっている。緊張感が増している」と書いていた。

 シェルパたちと欧州の登山家たちの間では昨年、乱闘が起きる騒ぎがあった。

 シェルパたちはまた政府に対し、死亡したシェルパの遺族や負傷して仕事に復帰できない仲間たちへの補償の支払いに応じるよう、来週28日を期限として回答を求めている。

 今回の事故では、裕福な顧客のために重いテントやロープ、食料などを担いで凍った斜面を移動するシェルパがさらされている危険が浮き彫りになった。

 1シーズンの間にシェルパたちは3000~6000ドル(約30万~60万円)を稼ぐが、事故が発生した際の保険による補償は十分でないことが多い。

 1953年にニュージーランドの登山家、エドモンド・ヒラリー(Edmund Hillary)卿とシェルパのテンジン・ノルゲイ(Tenzing Norgay)氏がエベレストに初めて登頂してから、300人以上が登山中に亡くなっており、そのほとんどが地元ガイドだという。(c)AFP