【5月3日 AFP】欧州最大の経済大国ドイツで、断食療法を行うクリニックが人気を集めている。断食ムーブメントの発祥の地の一つであるドイツでは、断食療法が医療保険の対象になる場合さえある。

 ドイツの富裕層の間では、「less is more」(少ないほど、豊かである)という考え方が広がりを見せ、病気の治療に断食療法を取り入れる動きがますます強まっているという。

 断食に熱心に取り組んでいるミハエル・ファン・アルムシック(Michael van Almsick)さん(57)は20年前から、1年のうち1か月をスイスとの国境に近いコンスタンス湖(Lake Constance、ボーデン湖)の美しい湖岸にあるクリニック、ブヒンガー・ウィルヘルミ(Buchinger-Wilhelmi)で過ごしてきた。

 ファン・アルムシックさんのクリニックでの1日はハーブティーだけという質素な朝食で始まり、昼食にフルーツジュースを飲んだ後、昼下がりに2時間の散歩をして、薄いスープと少量のハチミツの夕食を取る。また1日に少なくとも2リットルの水を飲む。

「1週間、たった1週間だけ試してごらんよ。そうしたら分かるから」とファン・アルムシックさんは笑顔で話す。

 英ロックバンド、ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)のサマーツアーのドイツ公演を取り仕切るほどの大きな広告会社をミュンヘン(Munich)で経営しているファン・アルムシックさんは、慢性的な肥満と併発した数々の病気を治療するためにブヒンガー・ウィルヘルミにやってきた。

 1日の摂取カロリーを、中年成人の推奨水準の約10分の1に当たる200~250カロリー以下に抑えると、高血圧の薬が不要になってしまうという。

 このクリニックに10日間滞在する費用は、スタンダードルームで約2500ユーロ(約35万円)だが、さまざまなサービスを加えると費用はもっと高くなる。スペインのマルベーリャ(Marbella)にもこのクリニックの施設がある。

 このクリニックの名前の由来となったオットー・ブヒンガー(Otto Buchinger、1878~1966)は、第1次世界大戦(World War I)中の1917年、関節リウマチが原因で海軍の軍医の職を辞した。ブヒンガーが試みた治療法は、およそ1世紀後の今、ドイツで最も普及した断食療法になっている。