【4月10日 AFP】ウクライナ南部のクリミア(Crimea)半島の4つの博物館が、同半島のロシア編入前にオランダの博物館に貸し出していた貴重な美術品などの数々が戻ってこないのではないかと懸念している。

 紀元前2世紀から中世後期の豊富な所蔵品のコレクションは、クリミア半島における混乱が起こる前にアムステルダム(Amsterdam)のアラード・ピアソン博物館(Allard Pierson Museum)へ特別展示のために貸し出された。

 クリミアとアムステルダムの博物館職員たちは今、特別展示が終わった後にコレクションはロシアとウクライナ、どちらのものになるのかと心配している。

「契約書では、これらの所蔵品はウクライナ国家のものと書かれている」と、クリミア・シンフェロポリ(Simferopol)にあるタブリダ(Tavrida)博物館の館長は語った。

 特別展示にはウクライナの5つの博物館が参加したが、そのうち4館がロシアに編入された地域にある。

 欧米諸国が承認していないクリミア編入によって、アラード・ピアソン博物館は「極めて複雑な法的問題」を抱えることになったと、同博物館を所有するアムステルダム大学(Amsterdam University)の広報担当者は述べた。

 さらに、「これらの美術品は誰のものなのか?」、「特別展示が終わるまではオランダにあるが、政変が起きた今、誰に返還すべきなのか検討しているところだ」と広報担当者は語った。

 同博物館はオランダ外務省に助言を求めるとともに、この問題についてウクライナとロシア政府と「頻繁に連絡」を取り続けているという。

 展示品には、刀のさややスキタイ(Scythian)人が祭事の際に使った金製のかぶと、ローマ時代に中国からシルクロードを通って運ばれてきた漆塗りの箱などがある。

 クリミアは古代の貿易ルートの要所であり、考古学者らが貴重な品々を発掘してきた場所だ。

「ウクライナがこれほどの数の価値ある品々を貸し出したことは過去にない」と、特別展示のプレスリリースには書かれている。オランダでの特別展は8月まで。(c)AFP/Maria ANTONOVA