【4月8日 AFP】交際相手を射殺したとして殺人罪などに問われている南アフリカの両足義足のランナー、オスカー・ピストリウス(Oscar Pistorius)被告に対する裁判で7日、弁護側の被告尋問が初めて行われ、同被告は涙ながらに被害者の遺族に謝罪した。また事件以来「ひどい悪夢」にうなされ、血の臭いで目が覚めることも頻繁にあると語った。

 ピストリウス被告は、恋人だったリーバ・スティンカンプ(Reeva Steenkamp)さん(当時29)の「計画的殺人」の罪に問われているが、弁護側はスティンカンプさんを侵入者と勘違いしてバスルームのドア越しに撃ってしまったと主張している。

 証言台に立った同被告は、すすり泣いてあごを震わせながら、スティンカンプさんを殺す意図はなかったと述べた。さらに、時にはおえつでほとんど聞き取れない声で、「この場を借りて、スティンカンプ夫妻に謝罪したい」と話した。

 また、事件が起きた昨年2月14日は「リーバを守ろうとしていた」と証言。「あの夜、彼女は自分が愛されていると感じながら眠りについたということを、私は約束する」と語った。

 しかし、他の遺族と共に裁判を傍聴していたスティンカンプさんの母親のジューン(June Steenkamp)さんは、被告が謝罪している間、石のような表情で被告を見つめていた。ジューンさんは、検察側の証人によるおぞましい証言が続いた5週間ずっと、亡くなった娘の痛ましい写真が公開された時でさえも、席を離れることなく傍聴を続けている。

 ピストリウス被告本人が、スティンカンプさんの死をめぐる状況について公に語ったのはこの日が初めて。同被告は、事件当夜以来「ひどい悪夢」にうなされ続け、「夜、血の臭いで目覚める」と話した他、抗うつ剤を常用していることも明らかにした。

 その後弁護側のバリー・ルー(Barry Roux)弁護士が、睡眠不足と苦しい証言のため被告は疲れ切っていると訴え、判事がそれを聞き入れたため、この日は予定よりも早く閉廷し、尋問は翌8日に持ち越された。裁判は少なくとも5月中旬まで続く予定。(c)AFP/Johannes Myburgh, Stephanie Findlay