【4月3日 AFP】ルワンダの首都キガリ(Kigali)にあるほぼ誰もいない法廷で、レオン・ムゲセラ(Leon Mugesera)被告は、20年前に「ゴキブリ」を皆殺しにしろ、などといったヘイトスピーチ(憎悪発言)を繰り返し、少数派のツチ(Tutsi)人を標的とした暴力を扇動した罪の裁きを受ける──。

 1994年に起きたジェノサイド(大量虐殺)では、約100日間で80万人以上が殺害された。これまでの調査によって、多数派のフツ(Hutu)人の指導者たちが民兵を組織し、虐殺を行ったことが明らかになっている。

 ムゲセラ被告を起訴したアライン・ムクラリンダ(Alain Mukurarinda)検察官は、「10年、20年かかっても構わない。何が起きたのかを明らかにしなくてはならない」と語った。

 4月7日、ルワンダは大量虐殺の始まりから丸20年を迎える。だが、この国は今も、この恐ろしい出来事の責任の所在を明確にし、それが決して忘れられることのないよう、どんなささいな情報でも記録し続けている。

 大量虐殺の首謀者とされる者たちを裁くため、隣国タンザニアに1994年に設立された国連(UN)のルワンダ国際戦犯法廷(International Criminal Tribunal for RwandaICTR)がこれまでに扱った裁判の件数は、ようやく60件ほどに達したばかりだ。

 一方、ルワンダ国内ではここ10年ほどの間に、地域共同体が行なう「ガチャチャ(Gacaca)」裁判で約200万人が裁かれた。

 ガチャチャ裁判では、共同体が法的知識を持たない判事を選出することから、人権団体は判決の公正性に深刻な疑問を投げ掛けている。

 キガリの法廷でムクラリンダ検察官は、証人たちが当時の記憶について話すのを聞くのは心身共に困憊(こんぱい)する作業だが、こうした残虐行為が再び起きることがないよう、この過程は継続されなければならないと語った。

「20年がたった今でも、大量虐殺の問題は残っている。だが、(タンザニアの)アルーシャ(Arusha)やガチャチャ、そしてこの法廷で行われている裁判に基づき、私たちは前進することができる」

(c)AFP/Hannah McNeish