【4月1日 AFP】中国共産党に逆らって民主的な選挙を実施したことで話題となった中国の村で3月31日、村の自治組織「村民委員会」の主任(村長)らを選ぶ選挙の投開票が行われ、抗議活動の元リーダーが村長に再選された。

 中国南部・広東(Guangdong)省にある烏坎(Wukan)村は2011年、共産党の幹部らが村人から違法に土地を収用し、1人を拘束して死亡させたとして、大規模な抗議行動を繰り広げ、共産党幹部らを追放したことで、世界的に有名となった。

 抗議行動のリーダーらはその数か月後に行われた自由選挙で大勝。そのうちの数人は、31日に行われた村民委員会を構成する7人を選ぶ選挙でも再選された。

 村には約9000人の有権者がおり、前回の選挙では数千人が投票所を訪れていたが、この日にAFPが確認できた投票者の数は1000人にも満たなかった。だが発表によると、かつて抗議行動を率いた林祖鑾(Lin Zuluan)氏が5000票以上を獲得して再選されたという。選挙管理委員会の職員らは、投票者数と票数の明らかな相違についての説明を拒否したが、地元住民らによると、家族や他のグループの分まで投票した人もいたという。

 烏坎村では、約430ヘクタールの土地が違法に収用され売却されたとされているが、村人たちの多くは、2012年の選挙で選出された村民委員会が、土地の返還を十分に進められなかったことから、失望感を示している。

 今回の選挙では、村を管轄する陸豊(Lufeng)市の当局職員ら数十人が投票所を取り囲み、現場は重々しい空気に包まれた。投票に訪れた人の中には、当局職員らの前で取材に応じることを拒否したり、匿名を希望したりする人もいた。

 さらに、選挙が以前のように「開かれた」ものではなくなってしまったとの声も聞かれた。そのうちの一人は票の集計が人々の目が届かない場所で行われていることを不安視し、「投票用紙は、不正があっても分からない場所に持って行かれてしまう」と語った。

 3月には、村民委員会の委員2人が陸豊の検察当局によって汚職容疑を掛けられ、身柄を拘束されている。2人は今回の選挙で数千票を獲得したとされており、委員会にはとどまる見込みだ。

 また別の委員は今年に入ってから、当局による身柄拘束を避けるためとして、米国に渡り、亡命を申請している。(c)AFP/Tom HANCOCK