【3月12日 AFP】世界トップの天文学組織、国際天文学連合(International Astronomical UnionIAU)は11日、火星のクレーターに命名する権利を販売している米事業者に対し、火星の呼称は売り物ではないと批判した。

 IAUは声明で「そのような構想は、宇宙への自由で平等なアクセスの精神に反するとともに、国際的に認知されている基準にも反する。従って、購入された名称が公式地図や火星儀に使われることはない」と述べた。

 IAU広報担当者のラーシュ・リンドバーグ・クリステンセン(Lars Lindberg Christensen)氏はAFPの取材に対し、問題となっているのは米クラウドソーシングウェブサイトの「Uwingu」(www.uwingu.com)だと語った。同サイトには火星の地図が掲載され、有料で誰もが火星のクレーターに名前を付けることができる。

 1919年に創設されたIAUは、太陽系の全ての惑星や衛星、彗星(すいせい)、小惑星に呼称を付ける任務を負っている。火星の地形的な特徴には、例えば山脈にはラテン語の「mons」、平原には同「planitia」が使われている。

 IAUが過去50年の間に命名した火星のクレーターは約1000個だが、火星には50万個のクレーターがあると推計されている。直径60キロ以上の大きなクレーターには故人の科学者や探検家、火星の物語を書いた作家らの名前が付けられ、小型のクレーターには人口10万人未満の地球の都市の名前が採用されている。

 一方IAUは、新たな天体を発見した宇宙機関や発見者が名前の公募をした際には、一般の人々も命名に参加できると説明している。「最新の事例では2013年に発見された冥王星の衛星二つの名前が公募で決まった」という。この二つの月はギリシャ神話に出てくる多頭の番犬ケルベロス(Kerberos)と冥界の女神ステュクス(Styx)から名前が採用された。

■Uwingu、「命名権販売で宇宙研究支援」

 2週間前にクレーター命名権の販売を始めたUwinguは、収益を「政府の財政削減の時代に、宇宙研究者、教育者、実業家への助成金として」用いると表明した。命名価格はクレーターのサイズに応じて5ドル(約500円)から5000ドル(約50万円)までで、2014年の資金調達の目標は1000万ドル(約10億円)だ。

 命名権の購入者はUwinguのデータベースに自分が付けたクレーターの名称を登録することができる。購入者が得られる権利はデータベースへの登録のみで、クレーターそのものに対する権利は発生しない。同データベースにはIAUがすでに命名したクレーターの名称も登録されている。(c)AFP