■ロシアに冷戦の余裕はない

 2013年のロシアの国内総生産(GDP)成長率は、わずか1.3%にとどまった。背景には、石油とガスによる収入への依存からロシア経済が脱却できずにいることがある。経済発展省によると、民間セクターの資本流出は今年に入ってからのみで、すでに170億ドル(約1兆7500億円)に達している。

 これらの要因に新興国市場に対する神経質な動きが加わり、ルーブルは持続的な市場圧力にさらされていた。しかしプーチン大統領がウクライナへの事実上の軍事侵攻に議会の承認を取り付けたことを受け、ルーブルは今月3日、対ドル、対ユーロで最安値を更新するまで下落した。この1日だけでロシア中央銀行は、同銀史上これまでの為替介入の最高額の5倍にも当たる110億ドル(約1兆1300億円)規模の為替介入を行った。

 2014年のロシア経済の予測をゼロ成長に下方修正した英ベレンバーグ銀行(Berenberg Bank)のエコノミストたちは「1980年代のソビエト連邦同様、(今の)ロシアには冷戦を戦う余裕はない」と断言している。

■本気で制裁するつもりのない欧米

 欧米諸国はウクライナの混乱に対するプーチン大統領の反応の速さに不意を突かれながら、ロシアへの報復を計画しているが、実際の制裁はそうした脅しほどでもないとプーチン氏は計算しているかもしれない。