【3月8日 AFP】カナダ・バンクーバー島(Vancouver Island)の海岸で、トレジャーハンティング(宝探し)を趣味にしている男性が、手持ちの金属探知機で泥の中に埋まっていた16世紀の英国硬貨を発見した。この小さな「お宝」が、カナダ史を塗り替える大発見である可能性があるとして注目を集めている。

 同国最西端で約435年前の硬貨が見つかったことで、同地がスペイン人水夫によって発見される2世紀も前に、実は英国人探検家がひそかにたどり着いていたという説の再燃につながったのだ。

 公式な歴史記録によると、現在の同国ブリティッシュコロンビア(British Columbia)州に最初に足を踏み入れた欧州人はスペイン人で、1774年だったとされている。その4年後に、英海軍の「キャプテン・クック(Captain Cook)」ことジェームズ・クック(James Cook)が到達したというのが定説になっている。

 防犯装置設置作業員だったブルース・キャンベル(Bruce Campbell)さんがこの硬貨を発見したのは昨年12月中旬。他にも、珍しい1891年のカナダの5セント硬貨や、1960年代の10セント硬貨、1900年の1セント硬貨などを見つけた。

 キャンベルさんは退職後、「太り始めたしテレビも見飽きた」ことから趣味で宝探しを始めたという。この硬貨を発見した時は、まさか自分の発見が歴史論争に発展するとは夢にも思っていなかった。

 陰謀論者と一部の歴史家らは、英国人探検家サー・フランシス・ドレーク(Sir Francis Drake)が、当時の多くの探検家同様「北西航路(Northwest Passage)」を探すため、現在の米カリフォルニア(California)へ1579年に探検に向かった際にカナダの太平洋岸にまで到達していたと考えており、この銀貨(1551~1553年に鋳造)がその証拠になるとみている。

 このいわゆる「ドレーク理論」の主な提唱者として知られ、2003年にはこれをテーマにした著作もあるサミュエル・ボールフ(Samuel Bawlf)氏もその一人。同氏はAFPに対し、ドレークが「後に到着する人々に、同地をイングランド(England)がすでに発見していたことを示し」、ひいては所有権を主張する意向で、先住民らに硬貨を渡していたのではないかという見解を示した。

 一方、この「証拠」の鑑定依頼を受けたロイヤルブリティッシュコロンビア博物館(Royal British Columbia Museum)の学芸員、グラント・ケディー(Grant Keddie)さんは懐疑的な見方を示している。ケディーさんは分析の際、「当時書かれたものや考古学上の遺物」を参考にするのが常だが、ドレークの記録は同氏の探検旅行の1世紀後に英ロンドン(London)の火事で焼失しているため、現在この説の裏づけとなる証拠は不十分だとしている。

 当の発見者のキャンベルさんは、「今後これ以上古いものを見つけるのは不可能だろうね」と語っており、ラッキーな掘り出し物に出会っただけで十分満足しているようだ。(c)AFP/Clément SABOURIN