【3月3日 AFP】鞍(くら)や蹄鉄(ていてつ)を付けない野生のウマの群れが数百年前と同じように自由に走り回っている――スペインとポルトガルの国境地帯に広がるオークの森では今、そのような光景を見ることができる。

 自然保護団体によると、農業が減少しているスペインでは現在、放棄されたままになっている農村地域に、オオカミやハゲワシ、希少種の草食動物などの野生動物の姿が戻りつつあるという。

 面積500ヘクタールのカンパナリオ・デ・アサバ(Campanarios de Azaba)自然保護区には、スペイン原産の「レテュエルタ(Retuerta)」品種のウマがこの2年間で数十頭放たれた。

 同保護区を運営する自然保護団体のカルロス・サンチェス(Carlos Sanchez)代表は「レテュエルタは、太古の昔からこの地域に生息している素晴らしい馬だ」が、現在は絶滅に近づいていると述べ、「過疎化が原因で放棄された生態系の管理を目的で、最も原始的な品種の個体数の回復を進めている」と説明した。

 遺伝学研究により、欧州地域最古の馬品種の1つとして特定されているレテュエルタのウマの現存する個体数は、全体で約150頭だ。

 ここのレテュエルタのウマは、以前の唯一の生息地だったスペイン南部のドニャーナ国立公園(Donana National Park)からカンパナリオに連れてこられたものだ。第2の繁殖地を形成することを目的とし、現在は約50頭が生息している。

 希少種のハゲワシや自由に歩き回るウシとともに生息しているレテュエルタは、自然保護団体が「再野生化」と呼ぶ取り組みの対象となった先駆け的存在だ。

 カンパナリオ保護区は、多くの国々で「野生」を通した開発に取り組んでいるイニシアチブのRewilding Europeから一部資金援助を受けている。

 オランダに本部を置く同組織の代表、フラン・シェパース(Frans Schepers)氏は「欧州は歴史上初めて、牧草地が激減するという状況に直面している」と語り、「スペインには、過去20~30年の間に放棄された土地が多数存在する」と指摘した。