【3月4日 AFP】固体の物質中に存在するが、不思議なことに液体に似た挙動を示す新しい種類の微小粒子集合体を発見したとの研究論文がこのほど、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 論文を発表したドイツ・フィリップ大学マールブルク(Philipps-University Marburg)などの研究チームは、これを「ドロプルトン(Dropleton)」と命名した。

 この新しい量子実体は「準粒子」の一種で、非常に小さく、まばたきすると見逃すほど生存時間が短い。準粒子は、固体中に存在する他の基本粒子の結合体で、特異な性質を持つもののことだ。

 論文の共同執筆者で、同大学のマキーロ・キラ(Mackillo Kira)氏は、AFPの取材に「ドロプルトンは物質の新しい構成要素の1つであり、固体中に存在する複雑な多粒子構造体を形成するための安定した構成要素の1つだ」と語る。

「われわれの発見により、固体中に存在する既存の準粒子の『周期表』に新要素が追加される」(キラ氏)

 論文によると、各ドロプルトンもしくは「量子液滴」は、およそ電子5個と正孔(せいこう)5個で構成されると考えられているという。正孔とは、固体中の電子が移動して量子的な「穴」になっているところのこと。

 この微小粒子の集まりは、光による励起で短時間の間、波紋を立てるなどの液体の水のような性質を持つ「液滴」1個に凝縮される。

 ドロプルトンの生存時間は、わずか25ピコ秒(1ピコ秒は1兆分の1秒)だ。

 今回の研究に参加した米国立標準技術研究所(National Institute of Standards and TechnologyNIST)が発表した声明によると、あっという間に過ぎ去るこの生存時間も、光が特殊な形態の物質とどのように相互作用するかの研究をその間に行うには十分な長さだという。

 研究チームは新しい準粒子を探す実験で、ヒ化ガリウム製の半導体にレーザー光を毎秒1億パルスの出力で照射した際にドロプルトンを発見した。

 今回の発見は主に、光子(光の粒子)と物質との間で起こる反応についての理解を深めるために活用される。

 またドロプルトンは光に対する感度が高いため、光を検出する電子装置などにも応用できるかもしれない。

 準粒子のその他の例としては、静電気力で互いに引き付け合う電子1個と正孔1個で構成されるエキシトン(励起子)などがある。(c)AFP