【3月2日 AFP】ワインには非常にまろやかな口当たりのものもあれば、気分が悪くなるほど酸味の強いものもある。この違いはどこから来るのだろう。オノロジスト(ワイン醸造学者)たちによると、発酵の過程で酸味を抑える働きをする微生物が1つの要因だという。

 学名で「Oenococcus oeni」と呼ばれる乳酸菌がその鍵を握る微生物だ。赤ワインや一部の白ワインの醸造過程で、ぶどうの糖分をアルコールに変化させる主発酵(一次発酵)が終了した後に行われる二次発酵で、この乳酸菌が大きく関わる。マロラクティック発酵とも呼ばれるこの二次発酵で、「Oenococcus oeni」の働きにより、豊かでまろやかな風味の、口当たりの良いワインが生まれる。

 大量生産を行うワイン醸造所では、規格統一ワインのために産業用バクテリアを使用するが、ワインに含まれるクエン酸の量など多くの変動要素があり、予期しない仕上がりになることもある。

 スペインとイタリアのチームが英学術専門誌「英王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society)」に発表した新たな研究成果が、こうした問題の助けになるかもしれない。研究チームは、Oenococcus oeniのあるDNAから導き出したプロテオーム(細胞内で合成されている全たんぱく質)をマップ化し、マロラクティック発酵の成功の鍵となるOenococcus oeniに特有の152のタンパク質を解析している。

 これまでに解析されたのは全体の10%だが、すでに研究チームは有用性が期待できるとし、「(ワインの中の過酷な環境における)Oenococcus oeniのストレスへの適応や働きに関する分子構造の理解を深めることは、産業目的の菌株の特性評価や選択において重要なことだ」と述べている。(c)AFP