■「たばこでリラックスできる」は誤解

 研究を率いた英バーミンガム大学(University of Birmingham)のジェンマ・テイラー(Gemma Taylor)氏は、今回の結果が喫煙に対する一般的な誤解の一掃につながってほしいと期待する。

「『たばこはストレス解消になる』『たばこでリラックスできる』など、喫煙が精神の安定にいいというのは、通説にすぎない。こうした通説を覆すのは難しい」と、同氏はAFPに語った。だが実際は、今回の研究で「たばこをやめてニコチン依存から解放されれば、精神状態が改善する」ことが示されたと言う。

 テイラー氏は、たばこ中毒に関する研究の主要理論を指摘した。喫煙者の心理状態はニコチンのせいで1日中不安定になっているというものだ。

 たばこから得られる落ち着きや充足感の後はすぐに、気持ちの落ち込みや不安、動揺といった禁断症状に襲われる。だが喫煙者は、このような症状はストレスやほかの要因によるものだと間違いやすい。そしてニコチンには安定作用があるために、喫煙者は自分の心を落ち着かせてくれるのは、たばこだと勘違いするのだ。

■増加するたばこによる死者

 世界保健機関(World Health OrganizationWHO)は昨年7月、たばこが原因で毎年約600万人が死亡し、2030年にはその数が800万人に増加すると推定した。死者の約80%が、中あるいは低所得国の人たちだという。

 喫煙率が減少している国もあるが、世界的にみれば、人口増加などが原因で喫煙者の数は1980年より増えていると、先月の米国医師会雑誌(Journal of the American Medical AssociationJAMA)は指摘した。 (c)AFP