【2月8日 AFP】キューバにあるグアンタナモ(Guantanamo)米海軍基地内の収容施設で、被収容者に対する拷問に自分たちの曲を使用されたとするカナダのゴシック系ハードロックバンド「スキニーパピー(Skinny Puppy)」が、米国防総省宛てに66万6000ドル(約6800万円)の請求書を送ったと発表した。

 キーボディストのケビン・キー(Cevin Key)氏は、カナダCTVテレビに対し、グアンタナモで以前看守をしていたファンの男性から、自分たちの曲が大音量で音楽を聞かせる拷問に使用されていたことを知らされたという。キー氏は「自分たちが知らない間に、誰かに対する実際の武器として勝手に曲が使用されたことについて、彼らに請求書を送った」と語っている。

 請求額は、ゴシック系バンドらしく「悪魔の数字」として有名な「666」を並べたものと思われる。

 グアンタナモの被収容者を「痛めつける」ために曲が使われたことに、バンドのメンバーは怒っているという。キー氏は自分たちの曲が人によっては「ものすごくひどい悪夢」のように聞こえるだろうと認めつつ「どんな曲であっても、6時間から12時間もひたすら超大音量にさらされたいなんて思わないね」と語った。

 人権団体などは、テロ関連の容疑でグアンタナモに拘束されている被収容者に対し、尋問などの際に職員が大音量で音楽を聞かせていると批判している。多くは暴力的な歌詞の曲だという。これまでにREMやレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(Rage Against the Machine)、メタリカ(Metallica)といったバンドが、自分たちの曲が使用されているとして非難してきた。

 一方、米国防総省は、スキニーパピーからの請求書は届いていないと述べている。トッド・ブリーシール(Todd Breasseale)報道官は「バンドのメンバーの1人が言っているように名もない一ファンの根拠のない主張や、他のメンバーが言っているような『噂』を基にこうした請求書が果たして合理的に作られ、適法に処理されるものなのかどうか、いささか疑問だ」とAFPに語った。

 またブリーシール報道官は、スキーニーパピーの自作自演による売名行為ではないかとも示唆し、「これだけ報道されれば無料で宣伝になる。新作アルバムやツアーの開始とタイミングを合わせたものだというニュースもある」と述べた。

 さらに同報道官は、睡眠遮断や感覚操作といった尋問手法の使用は、米軍野戦教範(Army Field Manual)では許可されておらず、法的にも禁じられていると強調した。

 熱狂的なファンを持つスキニーパピーは、ライブでは白塗りに黒いメーキャップをしたメンバーが、血に見せかけた液体を体に塗りたくり、大きな刃物を手にし、動物の皮をかぶって演奏する。処刑シーンを演じるときもある。(c)AFP