■性的指向を変える施術に伴うリスク

 同性に性的、恋愛的に惹かれることを「正常でポジティブなこと」だと評価しているアメリカ心理学会(American Psychological AssociationAPA)は2009年、「性的指向を変えようとする試みは、成功する見込みが少なく、危害を及ぼすリスクが存在することもある」と結論付けた。

 国連(UN)の世界保健機関(World Health OrganizationWHO)の米州事務局である汎米保健機構(Pan American Health OrganisationPAHO)は12年の報告書で、性的指向を変える施術は「医学的根拠に欠け、倫理的に容認しがたい」と述べている。

 米カリフォルニア(California)州は昨年、未成年者へのこうした施術を禁止した。同性愛者の権利擁護運動に押され、米国の他の州でも同様の措置が確実視されている。

 こうした動きに中国のグループも続いている。英米両国の大使館が一部資金を提供している「北京LGBTセンター(Beijing LGBT Center)」は先月発表した声明で、こうした施術は同性愛者の身体的、精神的健康を大きく損ない、自尊心をいっそう傷つけるものだと非難した。

 北京LGBTセンターに関わる2人の運動家は、性的指向を変える施術を行っていると思われるクリニックの前で「同性愛は病気ではない」と書いたスローガンを掲げた。こうしたクリニックなどの営業許可を取り消すよう保健当局に働き掛けたいという。

 AFPが取材した数件のクリニックは、同性愛は「生まれつき」でなければ、変えることが可能だと述べた。

 しかし広東(Guangdong)省の営業マン、リウ・ウェイさん(21)は「施術を受けた友人はたくさんいるけど、何人かは精神的に参ってしまった」という。また、リウさん自身が訪れた医院では、ポルノ映画を見て、性的なことを思い浮かべたら、手に巻き付けたゴムバンドで自分を弾くように言われたという。

 電気ショック療法を受けていたザンさんは、性的衝動は最初に消えたが、その先に大きな苦難が待っていたという。ザンさんは抑うつ状態になり、仕事を辞め、医療費を払うために借金を抱え、果ては自殺も考えた。「頭痛がひどくて我慢できなかった。死んでこれを止めたいと思った」と振り返る。

 最終的にザンさんは、自分の性的指向を変えられないことを受け入れ、父親にカミングアウトした。「後になってこれまでの人生を思えば、小さなころから自分はこうだった。同性愛者であることは、ひどいことじゃない」と今は思っている。(c)AFP/Tom HANCOCK