■家族と自身を守るために「偽名」使う

 このような状況でもRadio Alkulはこれまでの8か月、放送を続けてきた。放送は1日4時間。イスタンブールで収録した番組を、シリアの技術スタッフがダウンロードして聴取者にニュースを届ける。聴取者は10万人前後。1月には生放送を実施したい考えだという。

 シリア政府の管理下で報道を行うより、技術的な問題を抱えてでも国外から放送を続けるほうがやりやすいと感じている関係者も多い。トルコに避難する以前は、中部ホムス(Homs)で検閲を受けながら働いていたという記者のアハメド・ザチャルヤ(Ahmed Zacharya)さんは、「シリア国内では自由にできないが、国外から報じれば、シリアの人々に向けてより効率的にニュースを伝えることができる」と話した。

 ただ、シリアの首都ダマスカス(Damascus)から1000キロ以上離れていても、記者たちはリスクを負わずに働くことは不可能と感じている。国営テレビ局の元司会者「Slava」氏(30代)は家族への報復を恐れて偽名を使っている。同氏は「(こうでもしなければ)シリア政権の真実や政権が国民に対して行っていることを口に出すなんて決して考えられなかった」とその胸の内を明かした。

 Radio Alkulはシリアの内戦をきっかけに立ち上げられた。「自由」をモットーに掲げる他のラジオ局と同様に、アサド政権に断固として反対の立場だ。しかしその一方では「反政府」のラジオ局と位置づけられることは拒む。

 Radio Alkulは米国や欧州の非政府組織から資金援助を受けており、反体制派の統一組織「シリア国民連合(Syrian National Coalition)」とも近い関係にある。

 シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)によると、11年3月に始まった内戦による死者は13万人を超えている。(c)AFP/Philippe ALFROY