■形成されたビジネス・ネットワーク

 サッカーをめぐる暴力について著作があるブラジルの社会学者、マウリシ・ムラド(Maurici Murad)氏はこうした社会問題に当局が対処しない限り、6月12日に開幕するサッカーW杯ブラジル大会(2014 World Cup)期間中に訪れる外国人観光客が危険に晒されると警告する。

 ブラジルのジルマ・ルセフ(Dilma Rousseff)大統領は、トラブルメーカーに対する強硬な取り締まりを誓っているが、12月の乱闘でも当局の対応は手ぬるかったとムラド氏は批判している。

 W杯を前に大きな注目を集めているブラジルだが、実は南米サッカーにおける暴力の温床と目されているのは、隣国アルゼンチンの首都、ブエノスアイレス(Buenos Aires)だ。ここでは、バーラ・ブラバがサッカーというスポーツの中心部にまで影響を及ぼしている。

 地元のクラブ、ボカ・ジュニアーズ(Boca Juniors)とリーベル・プレート(River Plate)のバーラ・ブラバはそれ自体で小規模なビジネスと化しており、チケットの売り上げやグッズの販売を通して利益を上げている。

 同国C5Nテレビの取材によれば、リーベルのバーラ・ブラバはホーム・スタジアムのエル・モヌメンタル(El Monumental)周辺で年間100万ドル(約1億円)以上を荒稼ぎしている。当局はスタジアムでの暴行や恐喝、麻薬取引の首謀者たちを逮捕するなどして取り締まりに乗り出したが、まだ彼らの影響力をそぐまでに至っていない。

 パラグアイの社会学者アルベルト・カンディア(Alberto Candia)氏は、ボカ・ジュニアーズのバーラ・ブラバの影響力と圧力が及んでいるパラグアイのオリンピア・アスンシオン(Club Olimpia Asuncion)でも、一部で同様の手法を採用し始めていると指摘する。

「(クラブ)経営側がアウェーゲームの旅費を払っていた。さらに報奨金や無料チケットなどに釣られて、(オリンピアの)バーラ・ブラバは瞬く間に増えた。彼らは大抵、社会の末端にいる職を持たない人々の支配下にある」と述べる。