【12月21日 AFP】フランスのバイオメディカル企業Carmatは20日、体内埋め込み型人工心臓の臨床試験を開始したと発表した。ドナー(移植する臓器の提供者)不足の克服を目指している。

 同社によると、18日にパリ(Paris)のジョルジュ・ポンピドー欧州病院(Georges Pompidou European Hospital)で行われた手術は「成功裏に実施された」という。同社は、患者は集中治療を受けており、意識もあって家族に話しかけているが、手術の結果についてそれ以上のことを述べるのは時期尚早だとしている。同社は手術を受けた患者の氏名は公表していない。

 人工心臓は慢性心疾患の患者に一時的な手段として使用されてきた。心臓発作などで心臓を痛め、ドナー不足のために亡くなる人は多い。Carmatによると、欧米では10万人近くの人が心臓移植を必要としている。同社の人工心臓は、患者がドナーを待つことができる期間の延長と、入院患者の退院やさらには職場復帰さえ可能にすることを目指している。

■ポンプ使わず心臓の収縮を再現

 この人工心臓は重さ900グラムで、心臓の収縮を再現するためにポンプではなく柔らかいバイオマテリアル(生体材料)と数々のセンサーを使用している。血液凝固や患者の免疫システムによる拒絶反応が起きるリスクを低減するのが目標だ。外部電源あるいは身体に装着するリチウム電池を使用する。人工心臓の価格は約14万~18万ユーロ(約2000万~2600万円)とみられている。

 この人工心臓は、フランスの心臓移植の世界的権威アラン・カルパンティエ(Alain Carpentier)教授と航空防衛機器大手の欧州防衛宇宙会社(EADS)との長年の協同事業で生み出された。

 仏保健当局は9月、この人工心臓の第I相の臨床試験4例を3か所の病院で実施することを承認していた。少人数の終末期の被験者について、手術後1か月後、あるいはそれよりも早くドナーが見つかった場合はその時点で、生存しているかどうか調べる。結果が良好ならば第II相の臨床試験に進み、20人程度の患者を対象に、安全性に加え、生活の質、快適性、副作用などを調べる予定。(c)AFP