【12月7日 AFP】イスラエルの最先端施設「サイバー・ジム(Cyber Gym)」の制御室で、ハッキング防御訓練を受ける3人が頭からフードをかぶり、コンピューターの前にかがみこむように座っている。この施設ではイスラエル国内のITやインフラ関連の企業の社員が、サイバー攻撃を防ぐ訓練を受けている。

■「標的」として培った防御ノウハウを伝授

 サイバー・ジムはイスラエル北部沿岸地帯のオロト・ラビン(Orot Rabin)発電所の近くにある小規模ビル群だ。12月にイスラエル電力公社(IEC)により開設され、落成式には国家情報機関のメンバーも出席した。

 サイバー・ジムのオフィル・ハソン(Ofir Hason)所長は、AFPの取材に対し「イスラエルはサイバー攻撃を最も多く受けている国だと思う。中でもIECは、イスラエルで最も攻撃にさらされている企業として、世界中の企業にシステム・ハッキングの防御訓練を行う特有の能力を備えている」と述べた。

 IECのエリ・グリクマン(Eli Glickman)最高経営責任者(CEO)によると、同社は1時間に1万回程度の攻撃を受けている。

 撮影を拒み自身を「ミスター」と呼ぶインストラクターは「われわれは軍や治安機関、または大学から加わっている専門家集団だ」と話した。「ミスター」は隣接するビルにいる研修員のコンピューターに疑似攻撃を仕掛ける。

 研修員のほとんどは、エネルギーやインフラの企業のIT、システム系のエンジニアだ。研修員はリアルタイムで仕掛けられるハッキングを体験し、別のインストラクターが防御技術の上達の度合いを精査する。

■「サイバー空間、今後は戦場に」

 イスラエルの政治家や軍幹部はハッキングの危険性を頻繁に警告している。10月に行われた安全保障会議で、イスラエル軍のベニー・ガンツ(Benny Gantz)参謀総長は、イスラエルが地上とサイバー空間の両方で同時攻撃にさらされるという将来の戦争の展望を示した。「イスラエル市民の日常生活に必要なニーズを供給している場所が、サイバー攻撃を受ける可能性がある。信号機の停止や銀行の機能のまひなどだ」と述べた。

 サイバー・ジムでの演習は今のところ、国内企業が対象だが、IECの幹部はAFPに「米国や欧州、アジアの企業に対象を広げる可能性もある」と話した。(c)AFP/John DAVISON