【11月13日 AFP】利用者の数が急速に拡大している電子たばこに関する会議が12日、英ロンドン(London)の王立協会(Royal Society)で開催された。会議では電子たばこへの切り替えにより数百万人の命が救われる可能性があるとの意見が出たが、一方では健康への影響についてはさらなる調査が必要と警告する声も上がった。

 英ロンドン(London)の王立協会(Royal Society)で開催された会議には、科学者、専門家、政策立案者、業界関係者など参加し、電子たばこの利点について徹底的に議論した。

 利用を急速に拡大させてきた電子たばこは、ボールペンほどの大きさの電池式機器。ニコチンを含む溶液を加熱し、たばこの煙のような蒸気を発生させる仕組みだ。売り上げは過去4年間で毎年倍増しており、利用者の数は欧州全体で約700万人に上っている。

 英国がん研究所(Cancer Research UK)でたばこについて研究するロバート・ウエスト(Robert West)教授(健康心理学)は「たばこによる死亡者数は、全世界で年間540万人に上る」と語る。

 電子たばこへの切り替えによって、数百万人の命が救われる可能性があると同教授は指摘するが、会議では「そのような目標は実現可能なのか、どのようにして達成するのか」が議論された。同教授によると、禁煙の試みでは、その3分の1近くで電子たばこが利用されているという。

 公衆衛生とたばこ依存の仏コンサルタント、ジャック・ル・ウゼ(Jacques Le Houezec)博士は、電子たばこには多少の有害物質が含まれるが、その毒性物質の水準はたばこの煙に含まれる量の9~450分の1程度だと会議の席上で発言した。

■十分に解明されていない効果と影響

 英民間団体の禁煙健康増進協会(Action on Smoking and HealthASH)の最高責任者、デボラ・アーノット(Deborah Arnott)氏は、電子たばこは公衆衛生にとって大きな飛躍になるかもしれないと述べた。しかし一方では、その効果と影響についてはまだ十分に解明されているとは言えないとも警告している。同氏はまた、各たばこ会社が電子たばこメーカーを先を争って買収していることも指摘した。

 同氏はAFPの取材に「電子たばこは大きな可能性を秘めているとASHは考えている。電子たばこは喫煙よりも著しく害が少ない。喫煙が自分たちの命を奪うことを自覚している喫煙者らが、主に喫煙をやめ、喫煙から離れるための手段として、電子たばこに魅力を感じているのは明らかだ」と語る。

「だが現時点では、まだ結論は出ておらず、これらの電子たばこ製品には規制が必要と考えている。なぜなら規制なしでは同製品の安全性と有効性は保証されないという実際の懸念が存在するからだ」

「現在、電子たばこの市場に既存のたばこ会社が続々と参入している。彼らにとってはまたとない好機だろう。利用者が電子たばこに移行してしまうと、既存のたばこ会社は市場を失うことになるため、どうしても参入せざるをえない。大手電子たばこメーカーの多くはすでに買収されている」

 アーノット氏は「電子たばこに発がん性物質が含まれていても目に見える影響が直ちに表れることはない。しかし10年、15年、20年後にそれら物質によって死亡する人が出てくることになる」と警告する。

「電子たばこの進歩に科学が追いついていないのは間違いない」

(c)AFP