【10月2日 AFP】欧米では今、電子たばこが人気で、大勢の愛煙家がタールが含まれた昔ながらのたばこに別れを告げ、「無害で欲求も満たせる」とされるバッテリー駆動のこの代用品に引き寄せられている。

 煙の代わりに蒸気を吸う、おもちゃのようなプラスチック製たばこに多くの喫煙者が切り替える中、「法の隙間をかいくぐった」商品だと政策立案者たちが非難する欧州連合(EU)域内と米国で、電子たばこは法規制の脅威にさらされている。

 電子たばこは、本物のたばこに見かけや吸い心地、味などは似ていながら、たばこから生じるタールや灰、煙、それからほとんどの有害物質はないとうたっている。電子たばこでは本体内に入っている液体が温められて発生する蒸気を吸う。この液体には大抵、プロピレングリコール、ニコチン、香料などが入っているが、ニコチンフリーのタイプもある。

 電子たばこは最初、中国で2003年に従来たばこの代用品として登場し、喫煙者から反たばこ運動の活動家、政策顧問たちや多くの医療従事者までがこぞって、たばこを止めるために有効だと称賛してきた。一方で、使用者の健康にもたらす潜在リスクについてはまだ明確になっていないものの、電子たばこの安全性を疑問視する声もある。

 蒸気を吸うことは「ベーピング」(vaping)と呼ばれているが、これは中南米を筆頭に約10か国で禁止されており、また世界保健機関(WHO)も「使用者の健康に与える潜在的リスクはまだ特定されていない」として、ベーピングをしないよう「強く忠告」している。

 欧州各国の議員たちの間では、ニコチンパッチやニコチンガムなどの禁煙グッズと同様、電子たばこも薬局でしか販売できない医薬品に分類しようという動きがみられる。米国ではたばこ製品を規制する食品医薬品局(Food and Drug AdministrationFDA)が10月に電子たばこの販売規制案を発表すると見込まれている。

 ニュージーランドの最近の研究によれば、愛煙家を喫煙から引き離す効果は電子たばことニコチンパッチで同程度だった。しかし、どちらにしてもその効果は「控えめ」でしかなかったという。

 また別の研究は、非喫煙者が電子たばこを使用してニコチン依存になってしまう恐れや、もしかしたら禁煙していたかもしれない人たちが電子たばこによって、ニコチン依存から抜け出せなくなる可能性を指摘している。ニコチンは子どもや妊娠中の女性、心臓病のある成人に有害になり得る。

 専門家は電子たばこならば、従来のたばこのように肺の中にタールがたまることもなく、また紙が燃えるときに発生したり、たばこの栽培過程に由来する微量化学物質もないという。しかし、電子たばこの正確な含有物質や製造環境などは明確にされていない。さらに電子たばこの蒸気に含まれる化学物質が肺やその他の器官に及ぼす影響はいまだ解明されておらず、いずれも長期観察ではない少数の健康調査があるだけだ。(c)AFP/Olivier THIBAULT