■流行を追いかけるのではなく、新しい定番をつくる

 現在、欧米を中心にファッションのカジュアル化はかなり進んでおり、人々がファッションにおいて求めているものも変化している。「流行」を追うことが、もはや時代遅れになってしまうような中で、南さんは「新しい定番」を作りたいのだという。

 「人々がかつてのように流行を追うことが無くなりつつあると思うし、それはもはや逆らえない出来事だとも思います。僕もそれに疲れてしまった側面があるので、だからこそ世の中の変化に左右されない新しい定番を作りたかったんです。例えばあるシーズンに出たブランドの服がすごく気に入ったとして、それが汚れてしまったから同じものが欲しいと思っても、大概のブランドではもう次の年にはお店で手に入らなくなってしまいますよね。僕自身、それを不満に思ってしまうんですね。だから、理想としてはトイレットペーパーがなくなったから買いに行くような、日用品としての服というのが存在できればと。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、コンビニのように生活に根差したものを作りたい。だから今は、世の中で何が流行ろうがそれらに左右されず、僕らの琴線に触れるもので、新しいスタンダードを作る作業を継続していきたいと思っています」

 現在、様々な雑誌や媒体がライフスタイルをキーワードに掲げているが、南さん自身も取材を受けることが多くある。最近多いのは、自分自身が何を買い、食べ、読み……というその人の生活が浮き彫りになるような記事だという。

 「実は、僕がお店のことで一番気になるのは、どんな仕事をしている人がどんなものを買っていったかということなんですね。お客さんがどんなことを考えていて、どんな生活や仕事をしていて、どんなものが欲しいのかということに関しては、スタッフはいつも会話をしていると思いますし、僕もよくヒアリングしています。最近の媒体や雑誌の傾向を見ると、洋服に限らず“誰が何を買ったか”ということに注目していることが多いですよね。ブログのような本というか、“僕はこれが良いと思います”というようなものが多い。商品や出来事よりも人が関心の中心ですよね。それは昔と違う感じがするし、そういうところに今のリアリティーがあるのかもしれません」