【11月8日 AFP】イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(Tehreek-e-Taliban PakistanTTP)」は7日、マララ・ユスフザイ(Malala Yousafzai)さん銃撃事件への関与が疑われる強硬派のイスラム聖職者を新たな指導者に任命した。また政府が提案している和平交渉については、「時間の無駄」だとして応じない考えを示した。

 1日に米国の無人機攻撃で死亡したTTPの最高指導者ハキムラ・メスード(Hakimullah Mehsud)司令官の後継者に選ばれたのはマウラナ・ファズルラ(Maulana Fazlullah)師。パキスタン北西部のスワト(Swat)渓谷で、TTPによる2年間の暴力支配を指揮した人物とされる。

 パキスタンの情報機関は、女子教育の権利を訴えるマララさんが2012年10月にスワトで銃撃された事件にファズルラ師が関与しているという見方を示している。同師が2007年に出身地であるスワトを支配し始めて以降、TTPは厳格なイスラム法に基づき、犯罪者を公の場で斬首やむち打ちの刑に処したり、学校を燃やしたりしていた。2009年になって軍が同渓谷を奪還すると、同師は逃亡、以後は隣国アフガニスタン東部の山間部に潜伏しているとされる。パキスタン政府は、パキスタン国内で発生した攻撃は同師が国外から指示しているとみている。

■和平交渉が実現しない恐れ、暴力の激化を懸念する声も

 AFPの取材を受けたTTPのシャヒドラ・シャヒド(Shahidullah Shahid)報道官は、「和平交渉の実施など議題にすら上らない。現政府に権力はなく、主権政府どころか米国の奴隷に成り下がっている。和平交渉を行っても時間の無駄だ」と断じた。

 パキスタンの武装勢力に関する専門家で著書もあるイミティアズ・グル(Imtiaz Gul)氏は、ファズルラ師のような容赦のない指導者が選ばれたことは、TTPが暴力的な活動を強化させていく恐れを意味すると警告。同氏はAFPに対し、「ファズルラ師の選出により、TTP結成以降のパキスタン国内で行われてきたテロ行動が継続されることになる。TTPは政府との交渉に本気で取り組むつもりがないことがうかがえる」として、「TTPは今後さらに残虐さを増すだろう」と語った。(c)AFP/Hasbanullah Khan