【11月3日 AFP】1日にイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(Tehreek-e-Taliban PakistanTTP)」の最高指導者ハキムラ・メスード(Hakimullah Mehsud)司令官が米国の無人機攻撃で死亡したことについて、パキスタン当局は、TTPとの和平交渉に悪影響を与えるとして米国を批判した。

 ここ数年パキスタンを揺るがした有名政治家などへの襲撃事件に裏で関与していたTTPにとって、メスード司令官の死亡は大きな逆風とみられている。ただ、6年間武装闘争を展開しているTTPとの和平交渉に乗り出したい同国政府の努力がゆらぐ可能性もある。

 パキスタンのチョードリー・ニサル・アリ・カーン(Chaudhry Nisar Ali Khan)内相は、今回の攻撃は「和平プロセスに対する無人機攻撃」だったとして米国を非難。和平交渉の開始を視野に聖職者のチームがTTPと会合を開こうとしていた矢先にメスード司令官は殺害されたと説明した。

 内相は「われわれはこの7週間、パキスタンに和平をもたらすプロセスを進めようと1つ1つ努力してきた。しかし米国は何をした?」と述べ、「有力宗教学者で構成する政府代表団が和平交渉に正式に招く書簡を(TTPに)手渡すためミランシャー(Miranshah)に飛ぶ予定だったが、その18時間前に米国はこれを台無しにしたのだ」と続けた。

 また、パキスタン外務省は2日、米国のリチャード・オルソン(Richard Olson)駐パキスタン大使を呼び、メスード司令官が死亡した無人機攻撃と、その前日の攻撃について抗議したと発表した。ただ同省は、政府が引き続きTTPとの和平プロセスに努めていく姿勢を明言した。

 パキスタン政府は主権侵害だとして米国の無人機攻撃を繰り返し非難してきた。ナワズ・シャリフ(Nawaz Sharif)首相が先月米ホワイトハウス(White House)でバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領と会談した際にこうした攻撃の停止を求めたものの、米大使を呼んで抗議するのは異例。

 ある米国務省関係者はニサル内相の発言に具体的に言及せず、TTPとの和平交渉はパキスタンの内政問題だとの見方を示した上で、米国とパキスタンは過激派を制圧して地域を安定化させる上で「極めて重要な戦略的利害を共有している」とコメントした。(c)AFP/Hasbanullah Khan