【11月6日 AFP】子どもや若者が診断されることが多い注意欠陥多動性障害(ADHD)の診断例が増えていることについて、中には必要でないにもかかわらず強力な薬を服用させられている子どもがいる可能性があると医師らが5日、警告を発した。

 豪ボンド大学(Bond University)の「根拠に基づく医療研究センター(Centre for Research in Evidence-Based Practice)」のレイ・トーマス(Rae Thomas)氏を筆頭研究者とする研究チームは、英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical JournalBMJ)に掲載された論文の中で、いまだ原因が解明されておらず、薬の副作用が出ることもあるADHDの治療例が近年、激増していると指摘している。

 ADHDは重度の不注意、多動性、衝動性が頻繁にみられる障害だが、子どもの性格や成熟度に関する問題、あるいは子育てや家庭問題の影響までもが、ADHDという言葉によって「治療対象」にされているのではないかと一部の専門家は懸念している。

 中枢神経刺激薬リタリン(Ritalin)などADHD治療薬の処方は、英国やオランダでは2003~08年までの5年間でほぼ倍増し、また豪州では2000~11年までの11年間で72%増となっている。

 一方、米国立精神衛生研究所(US National Institute of Mental HealthNIMH)によると、米国では13~18歳のおよそ11人に1人、成人では25人に1人がADHDを患っている。

 今回の分析によれば、リタリンなどの治療薬はADHDの症状が「深刻な」場合にのみ使用されるべきで、データによると当てはまる症例は子どもの場合、約14%にすぎないという。しかし、米国では2010年にADHDと診断された子どもの約87%が、診断後に投薬を受けていた。

 ADHDの主な治療薬には、体重の変化や肝臓障害、自殺念慮といった副作用が起きる可能性がある上、子どもが大人に成長したときに及ぶ長期的な影響は解明されていないため、論文は「不必要で、しかも危険の可能性がある薬物治療だ」と警告している。

 論文では、子どもが本当に薬物治療を必要としているかどうかを見極めるために、10週間をかけて6段階の観察を行うよう奨励している。(c)AFP/Richard INGHAM