【10月30日 AFP】赤ちゃんを布でくるんで腕の動きを固定し、足はまっすぐに伸ばして巻く「おくるみ」が今、再び流行っているが、おくるみは乳児の股関節に悪影響を及ぼすとの研究結果が英専門誌「小児期疾患アーカイブス(Archives of Disease in Childhood)」に掲載された。

 おくるみは乳児の安眠を促す方法だとみなされている一方、専門家らは、成長して中年を迎えたときに、変形性関節炎を起こしたり、人工股関節置換術を受けたりすることにつながると警告している。

 今回発表された研究で、小児整形外科医のニコラス・クラーク(Nicholas Clarke)氏は「伝統的なおくるみは、発育性股関節形成不全(DDH)を引き起こす要因となり得る」と述べている。「骨盤周辺の健全な発達を促すためには、足を股関節の位置で曲げ伸ばしできる余地を与えておかなければならない。そうすることで股関節の自然な発達が可能になる。乳児の両足をきちんと揃え、まっすぐに伸ばしたまま布をしっかり巻いてしまうようなことはすべきではない」という。

 またクラーク氏は「おくるみ用の布は市販のものであれば、足を折り曲げたり股関節を動かしたりする十分なスペースが確保できるものでなければならない」ともアドバイスしている。

 クラーク氏が引用した数字によると、最近の北米では幼児の約90%が生後数か月間「おくるみ」を施され、英国では2010年から2011年にかけての1年間で「おくるみ」用の布の需要が61%増となっている。

 古代ギリシャ・ローマ時代にまでさかのぼるとされるこの習慣は、全身に軽い負荷をかけて安心感と温もりを感じさせることで、乳児に子宮にいたときの感覚をよみがえらせているといわれている。

 欧米諸国では、おくるみの習慣は赤ちゃんに悪影響を与えるとして数十年前に廃れていたが、中東や一部の部族社会などではいまだに根強く残っている。

 クラーク氏によると日本の啓蒙活動では、おくるみを避けるよう指導した結果、股関節脱臼の発症数が半減したという。

 この論文について、英ロンドン(London)にある小児科医院、グレート・オーモンド・ストリート病院(Great Ormond Street Hospital)の整形外科医アンドレアス・ロポシュ(Andreas Roposch)氏も、おくるみが幼児の股関節の正常な発達を妨げる証拠があることに同意し「成長中の、特に未発達の股関節に害をもたらす可能性があり、逆に良好な結果をもたらす要因は見当たらないため、おくるみはするべきではないというのが私の見解だ」とコメントしている。

 英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College LondonUCL)の小児科医であるアラステア・サトクリフ(Alastair Sutcliffe)氏は、伝統的に女性が自分の腰の上に乳幼児の足を広げさせて子どもを運ぶナイジェリアのような国では、赤ちゃんの股関節脱臼はほとんどみられないという例を挙げ、「もしも子どもを寝かしつけるためにおくるみをする必要があれば、親は子どもの身になって特に腰回りをきつく締めつけないように注意し、緩く巻いてあげた方が良い」と話した。(c)AFP