【10月22日 AFP】スウェーデンの島の深い森に、「ホビット」の村さながらの幻想的な住宅地が造成されようとしている。この種の宅地開発として初の試みとなるこの建設計画の裏には、持続可能な開発への本物の関心がある。

「ホビット」は、英国の作家J・R・R・トールキン(J.R.R Tolkien)の有名なファンタジー小説に出てくる、小柄で足が毛深いキャラクター。自作のホビットハウス建築で知られる英国人、サイモン・デール(Simon Dale)氏(35)によれば、ホビットたちは環境に優しい暮らしを実践する模範だという。

 デール氏は、スウェーデンの首都ストックホルム(Stockholm)中心街から約40キロ離れたムスコ(Muskoe)島に、ホビットハウス30戸の建設を計画している。1戸目は2014年半ばに竣工する予定で、数年以内に村全体が完成する計画だ。

 各戸は「地面の穴の中に、一人のホビットが住んでいました」と始まるトールキンの小説「ホビットの冒険(The Hobbit)」の主人公ビルボ・バギンズ(Bilbo Baggins)の家とよく似ている。天然素材と柔らかな丸みのある形というコンセプトを継承し、窓やドア、壁などに曲線が用いられている。

 その一方で、週末や休暇に自然を求めてやって来る都会生活者のために、多少は現代的な機能を備える予定だ。デール氏によると「最もハイテクな設備」は薪ストーブの横の電磁調理器。天井は広々と高く3.5メートルを確保するという。

 住宅建設に当たっての第1目標はエネルギー効率で、熱は太陽エネルギーと薪による火力で得る。また建築材料には、材木、石、砂、土、草など、地元の天然素材を使用する。

 デール氏本人も、妻と2人の子どもたちと共にこの10年間、ホビットハウスで暮らしてきた。現在はウェールズ(Wales)西部ラマス(Lammas)にある、英国初のホビット式エコビレッジに居住している。本業は写真家の同氏は、アースハウス建築が自分の情熱になっていると話す。このラマスのホビット村は、トールキンの「指輪物語(The Lord of the Rings)」のファンを対象にしたものではなく、環境に関心があり、自然の近くで暮らしたい人々にアピールしようとしている。

■資源の消費そのものを最小限に

 持続可能な開発をリードする他の国々と同様、スウェーデンでは近年、環境に優しい都市再開発が盛んに行われている。しかしデール氏は、そうした都市開発と自分の計画の大きな違いを強調する。「(都市再開発は)資源の消費効率を最大化することが目標だが、私たちは資源の消費そのものを最小限に抑えることを目指している」。デール氏によると、持続可能性のために必要なのは目新しい最新機器ではなく、よりシンプルに生活することだ。

 またムスコ島は、環境的に持続可能な集落を築く「夢の農園(Droemgaarden)」と題するプロジェクトの拠点でもあり、協力を要請されているデール氏は自分の計画にとっても実現に最適な場所だという。

 村にはホビットハウスの他、環境に優しい住宅350戸が建設される予定だ。地元の農家や住民は、昔の農村が息を吹き返せば、島の雇用創出や活性化につながると期待を寄せているという。(c)AFP