【10月18日 AFP】ロシアの首都モスクワ(Moscow)で、オランダ大使館に駐在する高位外交官が、自宅に侵入した身元不明の集団に暴行を受ける事件があった。犯人らは家の中の鏡に口紅で「LGBT」と書き残したという。露当局が16日、発表した。

 ロシアとオランダの関係はこのところ、国際環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)が所有するオランダ国籍の抗議船の乗組員30人がロシア当局に拘束されたことや、オランダでロシア外交官が一時拘束されたことをきっかけに緊張が高まっている。

 ロシアのメディア報道や当局によると、オンノ・エルデレンボス(Onno Elderenbosch)副大使(60)は自宅で電気技師を名乗る男らに襲われ、暴行を受けた。

 インタファクス(Interfax)通信とウェブサイト「lifenews.ru」が伝えた治安当局筋の話によると、犯人らは何も盗まなかったが、ピンク色の口紅を使ってレズビアン(女性同性愛者)・ゲイ(男性同性愛者)・バイセクシュアル(両性愛者)・トランスジェンダー(性別越境者)の略語「LGBT」の文字とハートの絵の落書きを残していった。副大使に大きなけがはなく、病院で治療を受けることもなかったという。

 ロシア捜査当局も、副大使が15日夜に暴行を受けたことを確認。犯人らは副大使をテープで縛った上で、現場から逃走したという。露外務省はこの事件に遺憾の意を表明し、治安当局が犯人逮捕に全力を尽くすと述べた。

 オランダのフランス・ティメルマン(Frans Timmermans)外相も自身のフェイスブック(Facebook)ページで事件発生の事実を確認。ロシア大使を呼び出して説明を求める意向を表明し、「われわれの市民は万全の保安体制の中で任務に当たる必要がある。この点について責任を持って対応するよう、ロシア当局からの確約を求める」と加えた。

 ロシアとオランダの関係は先週、ハーグ(Hague)の警察が児童虐待の疑いでロシア外交官を拘束したことにより、急激に緊張が高まった。オランダは後に、外交関係に関するウィーン条約(Vienna Convention)に違反したことを謝罪している。(c)AFP/Stuart WILLIAMS