【10月16日 AFP】南米のアマゾン(Amazon)川に生息する世界最大級の淡水魚ピラルク(学名:Arapaima gigas)は、食欲旺盛なピラニアから身を守るために優れた多層構造を持つ「よろい」を進化させてきたとの研究論文が15日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。

 米カリフォルニア大学バークレー校(University of California at Berkeley)のロバート・リッチー(Robert Ritchie)氏率いる研究チームは、顕微鏡調査と機械的検査によって、ピラルクのうろこが極めて頑丈な外殻を持っており、突き刺さった歯が折れるような仕組みになっていることを発見した。

 うろこは波の形状をしており、下にある厚くて弾力性の高いコラーゲン層に圧力をそらすようになっている。このコラーゲン自体も、ねじれて重なり合った「ラメラ」と呼ばれる多層構造になっており、約50ナノメートル(1ナノメートル=10億分の1メートル)の厚みがある。ラメラ構造は「かみつき」に反応して少し横滑りすることで、その圧力を広い範囲に分散させることができる。

 ピラルクのうろこは「特定の機能を実現するために生物由来物質が果たした進化の顕著な一例」だと論文は指摘。「特にピラニアのかみつきに対して、多重レベルの防御で対抗するためにある」という。

 ピラルクは巨大な肉食魚で、体長が最大4メートル、体重が200キロ以上にまで成長する。ピラルクにとっての最大の脅威は人間で、19世紀に食用のための乱獲が始まり、現在は絶滅が危惧されている。(c)AFP