【10月8日 AFP】日本で生まれ、今や世界に広がっている漫画が、北アフリカのアルジェリアでもブームになっている。

「アルジェリアの漫画は私たちのトレードマーク。DZ漫画と呼ばれています」と、同国初の漫画出版社Z-Linkを創業したサリム・ブラヒミ(Salim Brahimi)氏は語る。Z-Linkの漫画は、テキストから描画まで100%アルジェリア製だ。

 フランス語と口語アラビア語、そしてすぐに北アフリカのベルベル語で出版されたDZ漫画にはアルジェリアの色が詰まっており、すぐに売り切れるほどの人気だ。「1作品につき、3000部は印刷する」と、Z-Linkのカマル・バールル(Kamal Bahloul)氏は言う。

 Z-Linkはアルジェリア東部の街ティジウズ (Tizi Ouzou)で開かれた書籍見本市に出展中だった。2007年の創業以来、同社が抱える作品数も従業員数も増加している。「この冒険を始めた頃は、(ブラヒミと)私の2人しかいなかった」とバールル氏。「今では30人近い社員を抱え、成長率は年平均5%だ」

 発足の翌年、共同創業者であるブラヒミ氏が、最強のマーケティング手段を仕掛けた。同国で急成長している漫画や映画、ビデオゲームの批評を掲載する月刊誌ラーブストア(Laabstore)の創刊だ。同誌は新人漫画家の作品の一部を掲載するなどして、Z-Linkの大きな宣伝媒体となっている。この5年で、発行部数は2000部から1万部に伸びた。

 アルジェリアの漫画は日本の漫画のようなユーモアセンスやアート性を残しながらも、地域性が色濃い。「ストーリーは主にアルジェリアを背景としたもの」と「ビクトリー・ロード」シリーズの漫画家シド・アリ・ウンジャン(Sid Ali Oudjiane)さん(28)は言う。スポ根ものの同シリーズは、すでに全国的な賞を3つ受賞している。

 DZ漫画のジャンルは多彩で、若く才能ある漫画家も男女ともに育ってきている。フランスからのアルジェリア独立50周年を記念して2012年に発表された「革命」は、18歳の若手フェラ・マトゥギ(Fella Matougui)さんの作品だった。

 DZ漫画の人気は本物だが、同国ではまだ漫画だけで食べていけるような状況ではない。作家たちは副業として、あるいは週末など空いている時間の趣味として、漫画を描いている。

 今年、京都国際マンガミュージアム(Kyoto International Manga Museum)がアルジェリアの作品を入手した。「展示するためだけではなく、研究対象という意味合いもある」とブラヒミ氏は言う。「向こう20~30年で、アルジェリアの若者の家の本棚には必ず漫画本が並んでいるようになるだろう」と、バールル氏は予測する。この空前のブームを前に、いま彼に異議を唱える人はほとんどいないはずだ。(c)AFP/Yassine KHIRI