【10月4日 AFP】米国では喉の痛みを訴える患者のうち抗生物質が必要なのは1割程度にすぎないにもかかわらず、患者の約6割に抗生物質が処方されているとの調査結果をまとめたレター論文が3日、米国医師会雑誌(Journal of the American Medical AssociationJAMA)に掲載された。

 抗生物質が効かないスーパーバグ(超強力細菌)発生の一因となるため、抗生物質の過剰処方は危険だ。米国の保健当局は、世界の主な細菌感染症のほぼ全てが、一般的な抗生物質治療に対して耐性を示すようになっていると繰り返し注意を呼び掛けている。

 米ハーバード大学(Harvard University)と米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院(Brigham and Women's Hospital)に所属するマイケル・バーネット(Michael Barnett)氏とジェフリー・リンダー(Jeffrey Linder)氏は最新の研究論文で、1997~2010年に診療所と救急診療部の8100件以上の受診データを分析した。

 論文によると、1993年ごろは70~80%程度だった抗生物質の処方率は、2000年ごろ60%程度に下がったが、その後は横ばいだという。

「喉の痛みを訴えて受診する成人患者について言えば、一般的な原因の中では唯一抗生物質が必要になるA群溶血性レンサ球菌(Group A StreptococcusGAS)の有病率は約10%だ」と論文は指摘する。

 論文によると、病原菌の抗生物質耐性が強くなる懸念があるにもかかわらず、医師は必ずしも必要ではないペニシリン、アモキシシリン、エリスロマイシンなどの治療薬を日常的に処方する習慣を変えようとしないという。

「数十年に及ぶ努力にもかかわらず、喉の痛みで受診する成人患者への抗生物質の処方は漸進的な改善しかできていないことが分かった」と論文は述べている。

 研究者らは、論文で使用したデータに喉の痛みの重症度の詳細は含まれていないため、処方が適切だったかどうかを判断するのは不可能だとしている。

「抗生物質を、その恩恵を被る可能性が低い患者に処方することは無害ではない。抗生物質の処方は全て抗生物質耐性菌を増やすことにつながる」と指摘するこの論文によると、米国で1997~2010年に必要がないのに喉の痛みを訴える成人患者に処方された抗生物質の費用は控えめに見ても5億ドル(約480億円)に上るという。(c)AFP