【10月4日 AFP】競馬、第92回凱旋門賞(92nd Prix de l'Arc de Triomphe、芝2400m)に出走するキズナ(Kizuna)が、日本馬の初挑戦から44年目にして悲願の初優勝を飾れば特別な感動を覚えるだろうと、騎手の武豊(Yutaka Take)がAFPに対して語った。

 今年の第80回日本ダービー(80th Japan Derby)を制したキズナは、昨年の凱旋門賞で2着に入ったオルフェーヴル(Orfevre)とともに日本代表馬に選ばれた。日本人にとってキズナの存在は、2011年に発生し、1万8000人を超える犠牲者を出した東日本大震災の津波によって疲弊した心を取り戻すための一部となっている。

 馬主の前田晋二(Shinji Maeda)氏は、大災害の被害を受けた日本人が「絆」によって悲劇を乗り越えられるようにとの思いを込めて命名した。

 凱旋門賞への挑戦が6度目となる44歳の武は、キズナが優勝できれば、東京(Tokyo)による2020年夏季五輪の招致成功と同じだけの喜びをもたらすことになり、国全体が大いに勢いづくと考える。

 武は、「キズナというのは特別な名前で、日本人にとってはとても大事な意味を持ちます」とAFPに語った。

「もし凱旋門賞で優勝すれば、日本の皆さんにとって大きな喜びとなり、励みになると思います。今回の凱旋門賞には特別な思いを胸に抱きながら臨みます」

 また、武自身も凱旋門賞ではやり残した仕事があり、日本のファンに借りを返す必要性を感じているという。武は2006年に1番人気だったディープインパクト(Deep Impact)に騎乗しながら期待に応えることができなかった。

 欧州の主要レースで決して武の実力を認めることのなかった欧州メディアによる悪評を覆すためにも「凱旋門賞は私にとっても壮大な目標」だと言う。

「この偉大なレースで勝つことをずっと願ってきました。ディープインパクトとの結果は思わしくありませんでした。ディープが引退してからは必ず彼の子どもと一緒に戻って来るんだと心に誓いました」

「キズナと共に夢の一部を実現させられたことをうれしく思っています。そこからさらに凱旋門賞で勝って残りの夢を完結させたいです」

「キズナには自分がディープインパクトの息子であるという自覚はないでしょうが、私にはあります。そんなキズナと出走して優勝する喜びは計り知れません」

「日曜日(6日)には、忘れることのできない何かを達成したいです」

 キズナは凱旋門賞が開催されるロンシャン競馬場(Longchamp Racecourse)で2週間前に行われたG2ニエル賞(2013 Prix Niel、芝2400メートル)を制している。武は凱旋門賞が格上の戦いであることを認めた上で、キズナが優勝する可能性は非常に高いと自信をのぞかせた。 

 同レースでキズナは、今年の英国ダービー(Derby Stakes)を制したルーラー・オブ・ザ・ワールド(Ruler of the World)、さらに調教師として凱旋門賞7勝を誇るアンドレ・ファーブル(Andre Fabre)師の下でパリ大賞典(Grand Prix de Paris)を制したフリントシャー(Flintshire)を抑えて1着でゴールしている。

「世界最高の馬が集結するハイレベルな大会であることは当然わかっています」

「それでもキズナの状態はいいし、ニエルからも調子を上げている。前哨戦と日本ダービーを制覇した実力は優勝候補として認められてしかるべきでしょう」

 また、直近の18大会のうち、15大会でキズナと同じ3歳馬が優勝したという同レースの統計が後押しにもなる。

 キズナを育ててきた佐々木晶三(Shozo Sasaki)調教師は、ずっと以前から凱旋門賞に照準を定めてきたと話す。

 佐々木師は「25年以上も前、若かりし頃にフランスに渡って経験を積むために厩舎で働きました」と自身の経歴を振り返った。

「ものすごいカルチャーショックを受けましたね。その時から、フランスに遠征できる馬を育てることが私の目標となり、凱旋門賞への参戦はその最たるものでした」

「初挑戦した8年前は散々な結果に終わりました。移動でトラブルがあったのです」

 キズナによる凱旋門賞制覇は、佐々木師の個人的な夢を叶えることにもなる。夢を達成した先には家族と過ごす生活が佐々木師を待っている。

「凱旋門賞は当然ながら日本ダービーより重要な位置付けです」

「凱旋門賞に勝ったら私も引退できます。それだけ重要なレースなのです」

(c)AFP/Pirate IRWIN