【10月4日 AFP】若くして月経がなくなる「早発閉経」で自然妊娠ができなくなった女性の「原始卵胞」を活性化させる新技術により、世界で初めて日本の女性が出産したと、聖マリアンナ医科大学(St. Marianna University School of Medicine)などの国際チームが発表した。

 先月30日に米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)で発表された論文によると、同じ手法で2人目の女性も妊娠中だという。研究チームはこの技術について、まだ初期段階だとして注意を促しているものの、早発閉経の女性にとっては朗報となり得る成果だ。40歳前に月経が止まる早発閉経は、女性の約1%にみられるとされる。

 研究は、日本の女性27人(平均年齢37歳)を対象に行われた。月経が止まってからの期間は平均7年近くで、研究の一環として左右両方の卵巣を摘出することに全員が同意した。このうち13人には原始卵胞が残っていた。原始卵胞は通常、後に卵子へと発達する卵母細胞が1個ずつ含まれている。

 女性は約80万個の卵胞を持って生まれる。卵胞は大部分が休眠状態のままだが、毎月1個だけが発達して成熟し、排卵される。

 同論文の上席著者である米スタンフォード大(Stanford University)のアーロン・シュエー(Aaron Hsueh)教授(産婦人科学)は「われわれの治療法で、残っていた原始卵胞のいくつかを目覚めさせ、排卵を起こさせることができた」と述べている。

 研究チームは被験者の卵巣を摘出し、休止状態にある卵胞を、化学物質で活性化。この卵巣の断片を再び卵管近くに移植した。

 すると13人中8人の卵胞が発達兆候を示し、ホルモン投与によって排卵が促された。うち5人で卵子が成熟し、パートナーの精子を用いた体外授精が行われた。

 1人の女性は2つの胚(はい)を体内に戻され、うち1つが臨月まで成長。胎児の向きが縦位でなかったため、妊娠37週で帝王切開により出産した。

 帝王切開は、論文の主著者、聖マリアンナ医大の河村和弘(Kazuhiro Kawamura)准教授(産婦人科学)が自ら執刀した。卵胞の成熟にまで至った他の4人のうち、さらにもう1人が妊娠しているという。(c)AFP/Kerry SHERIDAN